そんな結論にたどり着いてしまった気持ちの表れなのではないでしょうか。
新しいグラス
ハチからの手紙を読んだ後、ナナは再びイチゴのグラスを買ってきます。
しかし、グラスが再び二人の前に並ぶのは2人の再会の日であるラストシーンです。
買ってすぐにハチにグラスを渡せない流れもまた、ハチとナナの距離が簡単には戻らないことを物語っているのでしょう。
ナナがハチと距離を置き始めた理由
ナナの大切なものは、全てTRAPNESTに奪われます。
恋人だったレンに大切なルームメイトだったハチ。
全てをトラネスとそのリーダーであるタクミの取られたと感じるナナは、得も言えぬ運命を感じます。
タクミが関わったことで開いてしまった2人の関係…しかしナナは自らハチと距離を開けようとしたのでしょうか。
BLACK STONESのデビュー
ハチが出て行った後、ナナは壊れたグラスを手にハチの元を訪れようとします。
しかしタクミの計らいにより、ナナとハチが出会うこともグラスがハチの手に渡ることもありません。
そんな中、ナナの元にBLACK STONESデビューの話が舞い込んできます。
意図せず仕組まれたデビューであっても動き出した流れは止まりません。
バンドのための忙しい日々が始まり、ハチに合いに行くこともできないまま時間だけが過ぎていったのです。
ハチからの手紙
2人のシェアルームを出る日ハチはナナに一通の手紙を残しました。
激励の言葉が綴られたそれは、ナナに対してのファンレターでありラブレターのようなものでした。
ハチの気持ちを受け止めたナナはハチの新たな住居に行くものの、タクミの計らいで会うことはかないません。
彼女からの手紙を胸に再び会う日を願いながらナナは彼女自身の道を歩み始めます。
開いた距離
会えない日々は自然と2人の距離を開いていきます。
お互いに直接連絡が出来ないまま、ブラストの野外ゲリラライブの日がやってきます。
ハチに届くヤスからのライブの知らせ…
それは、携帯の持っていないナナがヤスに頼んで送信させたものでした。
ナナが歌う舞台とそれを聞くハチの距離は、道路を挟んだ道一本分。
人込みと道幅の広い道路でできた距離は、これからナナたちブラストが置かれる嵐のようなか環境からハチとお腹の子を守る距離
でもありました。
「安全な位置からアタシたちを見ていて」
冒頭部と終盤に入るこのライブシーンには、ナナからハチへのそんな意味が込められていたのでしょう。
ナナがハチと距離を取ったのは、ハチを嫌いになったからではなくハチを自分たちの環境から守るためでもあったのです。
「一色」に込められた思い
ゲリラライブでハチを確認したナナが歌う「一色」
ハチへの気持ちを詰め込んだそれには、過去の思い出を反芻しながらも流れる嵐の中で進まねばならないナナの現状がよく表れています。
自分の幸せを 願えばいいよ
引用:NANA2/配給会社:東宝
そんな歌詞の中には、ハチに幸せになって欲しいと願うナナの気持ちも込められていました。
再会した2人の今後は?
花火大会が再び開催される日、ナナとハチは再び707号室で再会します。
並ぶイチゴグラスに、窓から見える花火大会…
かつて中止された花火大会を眺めることで2人は過去のしがらみから解放されたように感じます。
新しいグラスは、2人の関係が新たに切り替わったメタファーです。
お互いに憧れや恋心を抱いていた関係から、夢を現実として受け入れ友人同士になった形の変化を表しているのではないでしょうか。
ありがとうナナ… 絶対、幸せになるから。
引用:NANA2/配給会社:東宝
そう言って抱き合う2人の姿とハチの独白からはお互いの未来を励まし合っている印象を受けます。
それぞれが別の道を歩んでいくことを久しぶりの再会で確認し合ったのでしょう。
愚かさにすら共感してしまう映画「NANA」
同じ名前の少女2人が幸せな終わり方をした「NANA」と違い、「NANA2」ではお互いが別の方向を向いて歩きだしました。
きっかけとなったハチの妊娠や流されやすい性格は、多くの女性を苛つかせ、共感させたのではないでしょうか。
2人のナナを見ていると、「夢がかなうことと幸せになることは別もの」というハチのセリフがとても深く突き刺さります。
ナナとハチの物語は、夢と愛の狭間で戸惑い悩む女性の道しるべの1つになるのかもしれません。