出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07J5K6B8T/?tag=cinema-notes-22
2018年にアメリカ・オーストラリアの伝記ホラー映画として公開された映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』。
舞台はカリフォルニア州サンノゼにある幽霊屋敷として有名なウィンチェスター・ミステリー・ハウスです。
監督はスピエリッグ兄弟、主演のヘレン・ミレンは本作がホラー映画デビュー作品となりました。
物語はウィリアム家に襲いかかった突然の悲劇という史実をベースに展開されます。
本稿では精神科医のエリック・プライスがサラを正常と診断した意味をネタバレ込みで読み解いていきましょう。
また、この曰く付きの屋敷を増築している理由に冠しても併せて見ていきます。
過去と向き合う物語
本作は実話を基にしたゴシックホラーであり、霊媒師の助言や24時間365日ずっと増築を続けるなども史実通りです。
そこで本作がテーマに置いたのは主人公サラが過去の自身に起こった出来事と向き合い精算していくことでしょう。
故にホラーというよりは寧ろヒューマンドラマに重きが置かれており、ただ怖がらせることを目的にはしていません。
ただ、そうなると説明台詞による修辞が多くなるせいか批評家をはじめ受け手からの評価は芳しくありませんでした。
しかし、真剣に向き合ってサラが自分や仲間を過去の柵から解放していく過程は一つのカタルシスを確かに生み出しています。
この基本構造を押さえた上で本稿を考察していきましょう。
サラを正常と診断した意味
本作でサラにとって欠かせない重要人物の一人が精神科医エリック・プライスです。
彼はサラの精神鑑定書を作成するためにやって来て屋敷内の騒動に巻き込まれますが、最終的に正常と判断します。
あれだけの奇怪な現象を次々と経験していながら彼女を正常と判断した理由は何だったのでしょうか?
ネタバレを含めながらその根拠を洗い出していきましょう。
エリックは一度死んでいる
物語の後半で判明しますが、何とエリックは既に一度“死んでいる”ことが判明しています。
しかもご丁寧に自らが撃たれたウィンチェスター銃の弾丸をその証拠として持っていたのです。
即ち臨死体験を経たことで彼には本来見えないはずの霊や怪奇現象が見えるようになってしまっています。
だから彼は既に人間としての一線をとうに超えており、価値基準自体がまず正常ではなくなっているのです。
もしこれが一度臨死体験を経ていなければ、もしかしたら異常の診断を下したかも知れません。
ベンの亡霊による呪い
サラとエリックは二人揃ってベンの亡霊による呪いを受けているという共通項があります。
ベンの兄弟がウィンチェスター銃で殺された逆恨みとしてエリックはその流れ弾を受けたのです。
だからこそ二人はベンの亡霊に対しては殊更慎重に敵対しており、最後は協力してベンの亡霊を倒しています。
共通の宿敵がいることで共感しやすくなっており、決してサラの言動・行動が異常ではないと分かるのです。
そうした一種の背中合わせの相棒という感じの絆がこの二人の間に生まれていたのでしょう。
百聞は一見にしかず
サラが正常であることを決定づけたのはサラの体がベンの亡霊に乗っ取られたのを目にしたときでした。
この時サラは自分の意志とは無関係にベンの想いを叫ばされていました。
ウィンチェスター家は疫病だ!こんな女はくたばれ!
引用:ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷/配給会社:REGENTS
どう考えても正気のサラが口にする言葉ではなく、ここでエリックは「戦え!」と言っています。