トウモロコシ畑での鬼ごっこも、ブヨブヨとした沼地でジャンプして遊んでいたのも本当はエリアス1人だったのです。
弟が死んでいると信じたくないエリアスは、ルーカスという幻覚を作り上げて全ての行動を共にしていたのです。
ストーリーの節々に見える伏線
ルーカスの死の真相はラストシーンまで明確にされません。
しかしそれを匂わせる現実はストーリー中に多数ちりばめられています。
2人で遊んでいる時、エリアスはよくルーカスの名を呼んでいます。
これは実在しないルーカスをエリアスが呼び出している行為だと考えられます。
また、母親との会話シーンではルーカスはほとんど口を開きません。
「私は誰でしょうゲーム」をしている時は直接母親に話しかけていますが、会話のタイミングはエリアスと同時です。
つまり、直接母親とコミュニケーションを取れない存在=幻想・幻覚であると分かります。
猫の死体で揉めた直後の
もうママはフリをしないからね
食事も服も1人分だけ
ルーカスに話しかけないと約束して
引用:グッドナイト・マミー/配給会社:AMGエンタテインメント
という母親のセリフが観ている者の疑問を確信へ近づけます。
さらに挙げると、ルーカスは重要なシーンでたびたび音も無く突然姿を消します。
このような描写が繰り返されることからもルーカスは本当に存在するのかという疑念が強まります。
また、ストーリーを通して道具を使っているのも一貫してどちらか片方だけです。
巧みなカメラワークで2人が同時に行動しているように映りますが、掃除もゴキブリの飼育も全てエリアス1人で行っているのです。
このような多数の伏線により、ストーリーに隠されたナゾは割と早くから視聴者に突き付けられているのが分かります。
母親が1人分の食事しか作らない理由
母親がエリアスの分しかジュースを作らなかったり食事を作らない理由は、ルーカスが母の目に映っていないからです。
ルーカスの死を受け入れないエリアスの行動は受け入れているものの、母親は存在しないルーカスには対応しません。
ルーカスにもあげて
引用:グッドナイト・マミー/配給会社:AMGエンタテインメント
自分の分の飲み物しか出ないことに対してこう言うエリアスに対して
欲しいなら 自分で言いなさい
引用:グッドナイト・マミー/配給会社:AMGエンタテインメント
という対応も、ルーカスが居るかのようにふるまうエリアスに対する最大の譲歩です。
母の目の前にはエリアス1人しか存在しないのであれば、1人分の食事しか作らないのももっともな行動といえるでしょう。
猫を殺した犯人は誰?
2人は地下墓地で見つけた猫を「レオ」と名付けてこっそりと飼い始めます。
しかしある日、子ども部屋に隠していたはずのレオは行方不明に…
家じゅうを探し回って見つけたレオはすでに死んでいました。
きっとママがやったんだ
引用:グッドナイト・マミー/配給会社:AMGエンタテインメント
双子はそう確信しますが、実際に猫を殺した犯人に対する描写は入っていません。
では、レオはいったい誰に殺されたのでしょうか。
地下で見つかるレオの死体
レオの死体は地下の部屋の隅、水道管かなにかのパイプの奥まった場所で見つかります。
目立った外傷は無く、誰に殺されたのかも定かではありません。
すでに成猫として育ちきっていた猫なので老衰や病死というのも考えられます。
庭で遊んでもいいけど、家に何も持ち込まないで
引用:グッドナイト・マミー/配給会社:AMGエンタテインメント
という母のセリフはこのシーンへの伏線にはなっているものの、実際に猫を殺した動機には弱い気もします。
実際のところレオがどうして死んだのかは明らかになっていないのです。
水槽に入れられた死骸
猫の死が母の手によるものという証拠がないまま、兄弟は母に反抗しはじめます。
2人はゴキブリを飼育していた水槽を空けて猫の死骸を入れ、アルコールで満たしてリビングの机の上に置いておきます。
水槽に死骸を入れておくことが何かのメタファーなのかとも考えましたが、これに当てはまるものはありません。
レオの死に対する母親への抗議行動が、このような奇妙な行動に至ったと考えるのが自然なのかもしれません。
狂っていくエリアス
「あなたがママ」と10回言いなさい!
そう強制されたあとのエリアスは、母親が別人なのではないかという疑惑を深めていきます。
ルーカスに「あれは本当のママじゃない」と囁かれるシーンが繰り返されていますが、事実はエリアス1人の思い込みです。
ルーカスの囁きはエリアスの幻覚でしかないのです。