複雑な心理戦を描く小説と比較して、わかりやすくそして視覚で捉えやすい演出になっているのではないでしょうか。
ギリギリのところまで追いつめる、という演出はハリウッドならではの脚色ともいえます。
大きく違うラストシーン
無常観とヒーロー感
原作ではケイジとリタの戦闘シーンが繰り広げられ、リタが死ぬことで結末をむかえるのです。
無常観を胸に戦い続けることを誓う、という原作のラストは日本独特の死生観を現したものといえるでしょう。
一方、劇中ではリタと共に戦い抜くことで、アメリカのヒーロー感を前面に出しているようです。
愛する者の為に戦い、地球の為そして人類の平和の為に宇宙人と戦うというハリウッドSFアクションならではのメッセージ性を感じます。
観た者がスッキリと幸せを感じることが出来る結末になりました。
エンターテイメント性を押し出した
本作では主演のトム・クルーズに対し、リタは下記のセリフを放ちます。
リセットする
引用:オール・ユー・ニード・イズ・キル/配給会社:ワーナー・ブラザース
まさにゲームのようなループ体感が繰り広げられています。
そして劇中では、このリセットに関して「強くなれる」という肯定的な捉え方です。
ラストシーンでもループが再び起きたことが平和的な解決へと繋がっていったといえるのではないでしょうか。
確かに観る者は完全懲悪でスッキリとする世界観に楽しかった、という感想を持つことでしょう。
しかし原作では、都合の悪い過去をリセットすることは良いことではないと訴えかけています。
失敗や行き詰まりを全て受け入れるということが、ひとつのテーマに掲げられているのです。
リセットしても記憶が消えないという劇中の設定は、失敗を受け入れて成長するという本来の流れに沿ったものなのかもしれません。
タイムリープした理由
本作の結末について、多くの意見があがったのが最後のループ理由です。
最後のループも偶然出来た
ウィリアムは劇中でオメガ・ギタイを倒した際に、体液にまみれています。
これは彼にオメガ・ギタイの持つループ制御能力が移されたから、と考察出来ます。
ヒントは彼の目が真っ黒に染まった点です。
冒頭部分でアルファ・ギタイを偶然殺した時と同じ目の色になっていたのです。
ウィリアムはつくづく生きることを望まれた人物なのでしょう。
ループしたのにオメガは死んでいる
ウィリアムはラストシーンで再度ループしたにもかかわらず、なぜオメガ・ギタイは消滅していたのでしょうか。
時間が戻れば当然そこはオメガ・ギタイが存在する世界のはずです。
しかし、本作を辿ってみると単に時間が繰り返されるというわけではないようです。
ループはオメガ・ギタイの能力であり、それをウィリアムが受け継いだことになります。