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映画『ジョーカー・ゲーム』(JOKER GAME)は柳広司の原作短編小説を実写化したものです。
原作には他に「ダブル・ジョーカー」「パラダイス・ロスト」「ラスト・ワルツ」がオムニバスとしてあります。
テレビアニメや舞台など様々なメディアでシリーズ化され、入江悠監督が亀梨和也と深田恭子を中心に据えて作りました。
物語は昭和時代の帝国陸軍を舞台に処刑寸前の青年が結城中佐に救われスパイとしての任務を与えられる所から始まります。
本稿ではそのD機関の魔王の異名を持ち謎めいた雰囲気を放つ結城中佐の本当の狙いをネタバレ込みで考察していきましょう。
また、三好の正体や二重スパイになることを提案した理由なども併せて読み解いていきます。
原作小説との違い
まず本題の考察に入る前に原作と実写映画の違いについて軽く触れておきましょう。
原作ではどちらかといえばD機関の謎や結城の正体などミステリー要素に重きを置いた推理小説の作りです。
一方の実写版は嘉藤の成長譚に重きを置いた「007」や「ボーン」のようなスパイアクション映画となっています。
つまりD機関がどういうものであるとかそういう謎解き要素はあくまでも脇に置く形となりました。
日本には時代劇の忍者などを除いてスパイ映画文化がないことから本作を通して作ろうとしたのでしょう。
その作風の違い故に評価は賛否両論ですが、映画は「画面の運動」なのでこの方向性もあっておかしくありません。
結城の本当の狙い
さて、本作最大の謎は嘉藤次郎なる青年をD機関へとスカウトした結城中佐の本当の狙いです。
わざわざ彼をスカウトして英国への任務を命じたのには何かしら目的があったからではないでしょうか。
あらすじをじっくり見ていきながら明らかにしていきましょう。
新型爆弾開発
まず結城中佐をはじめD機関が狙っていたのは新型爆弾の開発であり、その為の予算と設計図が必要です。
あくまでも優秀な戦力をスパイとして育て上げ軍事力を強化することが真の狙いとしてありました。
だからこそ軍の規律に時として刃向かう自主性を持った嘉藤は素質を見込まれてスカウトされたのです。
この辺りからD機関は少数精鋭のスペシャリスト揃いの施設であることが窺えます。
しかし、この新型爆弾開発を達成するためには細かい段取りと実行力が必要となるのです。
ブラックノートの入手
そしてその新型爆弾の開発に必要なのは設計図となるブラックノートであり、これは日本に存在しません。
それがあったのが英国で、だからこそ行動力のある嘉藤次郎にそれを任せることになったのでしょう。
しかも決して素質だけではなく様々なスパイとして必要な知識と実力も身につけさせてすらいます。
極めて論理的な段取りが踏まえられていることが窺え、過程のトラブルはあっても入手に成功しました。
そしてもう一つ残りの問題が開発のための予算確保だったのです。
参謀本部の弱味を握る
そして予算確保の為に使ったのがグラハム殺害の指示や軍上層部批判の音声を入手するという手段です。