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映画『007 ゴールデンアイ』は1995年公開のシリーズ15作目で、前作『消されたライセンス』から作風が大きく変化しました。
まず監督のマーティン・キャンベルをはじめスタッフが世代交代して演出やアクションのタッチも現代風になっています。
主演のジェームズ・ボンドにピアース・ブロスナン、新しいMにジュディ・デンチが起用されキャストも一新されました。
物語も含む大幅な刷新の結果大ヒットを記録しマンネリ打破に成功し、NINTENDO64で本作のゲーム版も出ています。
歴史的な転換点となった本作ですが、今回はアレックが銀行から金を盗もうとした理由をネタバレ込みで考察しましょう。
また、タイトルにもあるゴールデンアイが何をするのか?や、アレックの正体なども併せて掘り下げていきます。
冷戦時代の遺恨
本作の大きな特徴は“冷戦時代の遺恨”であり、冷戦時代を本作なりに解体し捉え直す物語となっています。
それが一番端的に表れているのが新しいMからボンドへ向けられた痛烈な次の台詞です。
あなたは女性蔑視の太古の恐竜で冷戦の遺物
引用:007 ゴールデンアイ/配給会社:UIP
これはジェームズ・ボンドという冷戦時代のヒーロー像が旧式化したことを皮肉っています。
ボンド以外にも犯罪組織ヤヌスのアレックスやウルモフ将軍なども冷戦の遺物です。
そうした様々な冷戦時代の遺物を狂気として宿した者達とボンドは戦います。
そのように見ると本作はジェームズ・ボンドが改めて「時代と向き合う」物語ではないでしょうか。
アレックが銀行から金を盗もうとした理由
さて、本作の縦軸はボンドとアレックの過去の因縁にあり、終盤の盛り上がりは歴代屈指でしょう。
そんな終盤、アレックはイギリスのロンドン銀行から大量のお金を盗もうとしました。
スパイ映画の悪役にしてはやることが小さく見えますが、それは理由があってのことでした。
あらすじを踏まえつつ、彼が金を盗もうとした理由を考察していきましょう。
イギリスへの復讐
まず根底にあったのはイギリスへの復讐であり、両親がコサック族だったという過去です。
冷戦下においてコサック族はイギリス軍の捕虜となり、それがアレックに深い怨念として残っていました。
冒頭のシーンだけを見るとまるでボンドに裏切られたからボンドへの復讐目的で動いたかのように見えます。
しかしそうではなく、アレックの両親を始めソ連の人達の憤懣やる方ない思いがアレックに凝縮されているのです。
あくまでも彼が狙ったのは国家の転覆という大きなものであり、そこに向かって一連の計画を練っていました。
不況を人為的に起こす
その上でこの銀行強盗計画の鋭かったところはイギリスという国を経済から追い込もうとしたことです。
どんな国もやはりまずは経済が安定していなければ滅んでしまい、あらゆる事業が不可能となります。
アレックをはじめヤヌスは決して金の亡者ではなく軍資金の使い方も弁えた犯罪組織です。
こうして不況を人為的に起こすことで、まず国家全体を転覆させる状況を作りたかったのでしょう。
基地破壊などに用いられた戦車などはあくまでも表向きの陽動であり、本懐は裏にしっかりあったのです。
大規模な破壊によらずとも国を滅ぼせる
そしてこの作戦の裏に見える真の理由は「大規模な破壊によらずとも国を滅ぼせる」と示したことでしょう。