この他にも、試合となればペコはどの選手にも負けられません。それがペコの考える「ヒーロー」だったからです。
しかし、当然それにはプレッシャーがかかります。ペコにとってつらい状況が続くのです。
アクマとの対戦によって負けたペコは、一番「ヒーロー」であるべき人に負けたのでヒーローを降りる。
つまり卓球を辞めようとするのでした。
ペコが投影された風間
勝ち続けなければならない、といえば王者海王のキャプテンを務めるドラゴンこと風間です。
自分の勝利を宿命だと信じている。風間にとって卓球は苦痛なだけなのかもな。
引用:ピンポン/配給会社:アスミック・エース
これは、風間の試合を観戦する孔のセリフ。
実は風間が試合前にトイレにこもるのは、勝ち続けることへのプレッシャーに押しつぶされそうだったからでした。
これはヒーローであり続けようとしたペコの姿が投影されているのです。
風間の場合、常に勝ち続ける精神的強さがありましたが、ペコは才能があっても努力が足りなかったためアクマに負けてしまいます。
ある意味ヒーローという言葉がペコを苦しめていたため、そのヒーローを降りることで、ペコは楽になろうとしていたのかもしれません。
気付いていたスマイルの才能
スマイルの前ではヒーロー(勝ち続ける存在)であろうとしたペコ。
スマイル自身もペコにヒーローでいてほしいからこそ、ペコに対しては強気になれませんでした。
ペコはそれに気付いていない「フリ」をしています。
気付いてたけど知らんぷりしてたんさおいら。びびって耳塞いでたんさ。でもあいつは俺を待ってる。
引用:ピンポン/配給会社:アスミック・エース
これは風間との試合の直前、更衣室でのペコのセリフ。ペコはスマイルが手を抜いていることを知っていたのです。
しかしヒーローあるべきとう強迫観念めいたものが、それに気付くことを許しませんでした。
スマイルの才能を認めるということは、ヒーローでいられないということ。だからペコは卓球を辞めるのです。
ペコにとっての卓球
先述していますが、ペコにとって卓球を続けることは、スマイルの前でヒーローでいることであり、勝ち続けなければならないものでした。
当然それだと、いつか疲れてしまいます。それが風間の姿でした。
ただ、アクマの説得以降、ペコは本当の意味で自分自身にとって卓球がどんなものであったのか見つけ出します。
ペコの卓球は楽しい
勝ち、負けではヒーローはつらいばかりです。しかし、長くヒーローであるための考え方をペコは見つけました。
ペコが風間との試合中に、空想の中でスマイルと会話するシーンに、ペコにとっての卓球が何なのか示唆するセリフがあります。
ペコなら、楽しめるさ。膝なら平気だよ、聞いてみな
引用:ピンポン/配給会社:アスミック・エース
通常ならば「楽しめるさ」ではなく、「勝てるさ」でしょう。しかしそれが「楽しめる」となっていることが、ペコにとっての卓球なのです。
楽しむことが第一。その延長線上に勝ちがある。ペコにとっての卓球は、この瞬間に「楽しむもの(本来はそうだった)」になりました。
相手も楽しませて最高の試合に
ペコの卓球は、より好敵手であればあるほど相手も楽しむことができるものとなります。
今回はその相手が「ペコの姿が投影されていた風間」でした。普段はギラギラしている風間が、ペコの試合中に笑います。
海王の部員もそれを見て、風間が笑っていることに気付くほどでした。
また、明るい真っ白な空間で、ペコと風間のみで会話するシーンでは風間も楽しかったことを認めています。
つまりペコにとっての卓球は、相手をも楽しい思いにさせる卓球なのです。
幼馴染3人たちをつなげてきたもの
スマイル・ペコ・アクマの3人は、タムラ卓球場で一緒に活動していた幼馴染です。
アクマはペコに対してライバル心を燃やし、スマイルはペコに憧れ、ペコは常に3人のリーダーでした。