この関係は成長しても変わらずあり続け、そうあり続けたがゆえ、映画内での人間関係のこじれが発生しています。
ただ、こじれを解消できたのも、卓球を続けてきたからこそでした。
後述しますが、アクマやスマイルは卓球を続けるペコが必要なわけで、それによってペコも2人にとってのヒーローであり続けるのです。
つまり幼馴染3人の人間関係において、卓球はなくてはならない存在だったのでした。
何だかんだでペコが好きなアクマ
映画冒頭のアクマは、ペコに対して嫌味なキャラクターです。
ペコはそれを何とも思っていませんが、アクマに負けた直後のペコのショックの程度を、実はアクマ自身がすぐに感じ取ります。
惰性で打つなら足洗えポンコツ
引用:ピンポン/配給会社:アスミック・エース
これはアクマが負けた直後のペコにかけたセリフです。こうしてみると、アクマなりの激励のようにも見えます。
つまり、アクマは今回の試合がペコの本気ではないと思っており、本来ならば自分が勝てない相手だとも思っているのです。
アクマはペコに負けたくないくせに、なんだかんだでペコをきちんと認めています。
だからこそ、ペコが卓球を辞めようとしたときに声をかけるのでした。
凡人にしか見えない才能者
アクマがペコに説得を試みる場面、アクマはこのように語ります。
凡人にしか見えねえ風景ってのがあるんだよ
引用:ピンポン/配給会社:アスミック・エース
ここでいう凡人にしか見えない風景というのは、おそらく才能を持っている人たちの「才能っぷり」でしょう。
アクマはその才能を無駄にしてほしくないからこそ、ペコに説得するのでした。
ペコに卓球を辞められると「浮かばれない」
同じくペコを説得しようとする場面、アクマはペコに死ぬほど練習をするように言った後、こう言います。
でなきゃお前に憧れた、スマイルや俺が浮かばれねえ
引用:ピンポン/配給会社:アスミック・エース
やはりアクマは、ペコの才能や短所(練習しないこと)を見抜いたのです。しかも、ペコに憧れも持っていました。
つまりアクマやスマイルにとっては、ペコは例え負かしてもヒーローなのです。
ヒーローを憧れることができなくなると、自身やスマイルも浮かばれない、そう思ってアクマは説得を試みるのでした。
スマイルは才能があってもメンタルが弱い
幼馴染たちの才能や努力を書き出すと、このようになります。
- ペコ:才能と負けん気はあるが、努力が足りない。すぐ腐る
- スマイル:才能はあるが負けん気がなさすぎる。練習はぼちぼち(小泉丈によって負けん気を獲得)
- アクマ:才能はないが、負けん気と努力は人一倍
幼馴染の「才能ある者」を見ると、スマイルには精神的弱さがありました。
しかし、実際に道場破りに出たころのスマイルは、卓球を辞めておらず小泉の指導の下成長している途中で改革が進んでいます。
その結果、アクマはスマイルにこてんぱんにやられてしまいますが、ある意味スマイルが弱さを克服したことを知ったのです。
だからこそ、次は自分に負けて一番迷っているであろうペコのところ(噂を聞いているはず)に向かうのでした。
ペコに必要なのは努力
凡人から見た才能ある者2人のうち、スマイルは次なる弱点を克服しようとしていました。
と、なるともう1人の才能ある者、つまりペコにもアクマは夢を託そうとします。凡人だったからこそ、そうしようとしたのです。
ペコは努力が足りないとアクマは感じていました。
だせえから一回しか言わねえぞ。血へど吐くまで走り込め、血便出るまで素振りしろ、今よりちったあ楽になるだろう。
引用:ピンポン/配給会社:アスミック・エース
ペコの弱点を伝えるとともに、激励をすることでペコに前を向いてほしかったのです。
つまりアクマは、幼馴染の才能ある者たちをさらに引き立たせる役割を果たしていることが分かります。
誰もが完全無欠なわけでない
本作に出てくる、風間や孔はボスキャラ的な雰囲気を出しつつ、それぞれに勝ちへのプレッシャー、上海では負けた、という欠点があります。
当然ペコ、スマイル、アクマたちにもそれぞれ欠点があることからも、本作に登場するキャラクターに完全無欠はいません。
そのためペコは卓球を辞めようとするし、アクマは自暴自棄から退学になる一方スマイルやペコを支えるという役割も果たします。
人間相互の関係により、それぞれにとって大事にしたいものを見つけ出してく。
その当事者と似た体験を持った人が作品に共感すると、さらに面白い発見が見つかるかもしれません。