そのため、姉弟の関係に口出しをしてきた母を厭い殺害したのです。
ルシールの弟に対する独占欲が、彼を囲むほかの女性たちを排除させていたのでした。
ルシールの強い執着心
登場時から真顔の表情が多く冷徹な印象のルシールですが、その真の性格は苛烈。
また彼女は、有形のものに対して強い執着を持つキャラクターでもあります。
屋敷への執着
物語後半の舞台となるのが、トーマスとルシールが育った屋敷アラデール・ホールです。
ふたりは、いえ、ルシールはこの屋敷に強い執着を持っていました。
屋敷がどれほど朽ちても決して離れようとせず、街へ移ろうというトーマスの提案には激昂さえしています。
彼女と弟の関係は禁忌にあたるもの。世間一般的に認められるものではありません。
だから彼女は、誰の目も憚らず弟と暮らせるアラデール・ホールに強く執着するのです。
髪の毛のコレクション
本性を出したルシールは、イーディスの金髪をひと房はさみで切り取り、引き出しの中に仕舞いました。
そこには他にも、同じように切り取り編み込まれた髪の毛たちが。
すべてルシールが殺した女たちのものです。
それらがきれいに並べられた様子は、まるで標本のコレクションのよう。
愛着のあるはずもない相手の髪をとっておくというこの奇妙な蒐集癖も、彼女の“モノ”にこだわる性質を表しています。
殺害の証拠は愛の証
ルシールは弟への愛のため、許されざる行為を繰り返してきました。
彼女にとって屋敷や殺した相手の髪の毛、そして遺品などは全て、弟を自分ひとりのものとしてきた証拠。
彼女は自分と弟の絆の証明を目に見え形として触れられるものとして残しておきたかったのです。
言い換えれば、ルシールは記憶や情感などの実体のないものを信じられないキャラクターといえます。
これは、幽霊の存在を知る主人公イーディスとは対比的。さらに本来愛情とは形を持ったものではありません。
愛の名のもとに罪を犯してきたルシールですが、彼女の行為は愛の本質からは外れているのです。
それが結果的に彼女と弟を悲しい結末へと導いていったのでした。
イーディスの父の死の真相
イーディスが結婚し、アラデール・ホールへ赴く大きなきっかけとなったのが父親カーターの死です。
彼の死の経緯を読み解くと、実はルシールとトーマスの歪んだ関係性が見えてきます。
シャープ姉弟の本性を見抜いていた
カーターは当初からトーマスと彼の姉に不信感を抱いていました。
情報屋の報告を聞き、その疑念は確信へ。そのためふたりをイーディスから遠ざけようとしました。
姉弟がカーターを殺害したのは、イーディスと結婚し彼女の財産を奪うのにその存在が邪魔だったため。
さらに、ふたりの本性に気付いたカーター氏を自分たちを脅かす存在として危惧したためと考えられます。
トーマスではなくルシールが殺した理由
カーターが殺されたのは男性専用のサロンの中です。
ならば実行犯はトーマスかと思いきや、実は変装したルシールでした。