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【眺めのいい部屋】ルーシーの選んだ道は正しかったのか徹底考察!ジョージとセシルの二人の男性がルーシーにもたらすものとは

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B003CJZKZG/cinema-notes-22

1900年代初頭のイタリア、そしてイギリスを舞台に展開されるラブロマンス映画『眺めのいい部屋』

イギリスを代表する作家E.M.フォースターの小説を、ジェイムズ・アイヴォリーが映画化しました。

アカデミー賞のノミネートは8部門!

そのうち3部門(脚本・衣装・美術部門)を受賞し、ジェイムズ監督の代表作となりました。

二人の男性の間で揺れる女性を描いた本作品。

映画の終盤で、ルーシーの選択に「待った!」を掛けたくなった方もいるのではないでしょうか。

一方で、その決断に静かな拍手を贈りたくなった方もいるはずです。

今回は、ルーシーの選択が正しかったのかを徹底考察!

二人の男性からルーシーが得たもの、得られるはずだったものを推察しながら、結末の意味を探ります。

二人の男性の間で「揺れさせる」設定

 『イタリアザマック 天秤』

一人の女性が二人の男性の間で揺れるのは、恋愛映画の典型です。

こうしたスタンダードなラブロマンスに欠かせない要素として「二人の男性のギャップ」が挙げられます。

ギャップが「良」と「悪」という上下に生じてしまったら、女性は頭を悩ませることなく前者を選択するでしょう。

しかしこれでは全く面白くありません。

どちらも同じくらい魅力的でありながら外見や性格が対照的という設定。

これがあるからこそ、ルーシーはスクリーンの中で約2時間の間揺れ続けたのです。

どちらも決定打に欠ける、という考え方も一つでしょう。

ルーシーにとってジョージとセシルのどこが魅力的で、どこが決定打に欠ける部分だったのでしょうか。

ルーシーにとってセシルとは

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

整髪料でピタッとセットした黒髪に、手入れされた口ひげをたくわえて、銀縁メガネを掛けている知的な風貌のセシル。

首元がタイトなシャツにスーツという出で立ちでステッキを欠かさない姿が印象的です。

20世紀初頭のイギリス貴族のお手本といったところでしょうか。

セシルを選ぶメリット

女性は家庭に入り夫を支えるのが当たり前だった時代。男性にはある程度の経済力が求められました。

その点でいえばセシルは満点。ルーシーの将来は約束されたようなものです。

彼の身分や経済力は魅力の一つだったでしょう。

セシルはベートーベンよりシューベルトを好んでいますが、実はここから彼の性格が垣間見えます。

生まれつきの才能で生きる天才よりも努力を積み重ねて生きる秀才に共感しているのです。

彼自身も秀才タイプだといえます。

常に真面目に努力を続けるセシルが夫になれば、結婚後の生活が立ち行かなくなることはないでしょう。

こうしてみると、セシルは結婚相手として申し分ないように感じます。しかしルーシーは、彼を選ばなかったのです。

硬派すぎるのが難点

フレディのピアノと鼻歌に耐えられず部屋を後にするシーンがありましたが、ここからも彼の性格が読み取れます。

「感覚」に頼る生き方を好んでいないのです。

基本や規律を重んじ、努力が人の価値を決めるという考え方が根底にあるのでしょう。

当然、基本がなっていないピアノ演奏も鼻歌も拒絶しました。

こんなセシルと結婚すれば、ルーシーはセシルの価値観に合わせた生活を強いられることは容易に想像できます。

またルーシーに初めてのキスをするときは、わざわざ了承を得る丁寧さ。

英国紳士として当たり前の態度ではありますが、まだ若い盛りのルーシーにとっては物足りませんね

ルーシーにとってジョージとは

英国男子 [雑誌]EYESCREAM2014年3月号増刊

セシルと髪色は違えど、ジョージもフィレンツェではスーツ姿でしたね。

しかしイギリスに帰国してからの彼は比較的ラフな服装をしていました。

ルーシーにとって彼はどんな存在なのでしょうか。

ジョージは刺激を連れてくる

自転車に乗ったりテニスをしたり、というのは貴族階級のセシルも経験があるかもしれません。

しかし全裸で水遊びはどうでしょうか。

インパクト大だったあのシーンのジョージを、セシルに置き換えて想像するのは非常に難しいですね。

イギリスの階級は経済面よりも家系が重視される傾向にあり、上流階級の人々は「上流階級らしさ」が求められます。

そうなると交友関係も同階級の人ばかりになり、あまりにアクティブ過ぎる趣味や遊びは淘汰されていくのでしょう。

セシルから求婚されるという事実から、ルーシーもそれなりの階級であることは明らかです。

そんな彼女にとってジョージは、刺激の塊のような存在だったのではないでしょうか。

階級社会の悲しき現実

うら若き乙女が刺激を求めるのは当然のこと。これは遺伝子に組み込まれた本能のようなものです。

しかしルーシーはジョージの想いを退けました。これはなぜなのでしょうか。

やはり階級の差は大きく影響したはずです。

彼女の周囲の人々がそうであるように、自分も上流階級の人と結婚するのが当たり前。

それ以外の選択肢はないと思っていました。

だからこそ中流階級、あるいは労働者階級のジョージからの求愛に決してなびかずにいたのです。

そして家族がセシルの感覚に疑問を抱くようになっても、婚約破棄せず「婚約者がいる」と素直に話したのです。

二人の男性がルーシーにもたらしたもの

眺めのいい部屋 (E.M.フォースター著作集)

二人の男性の狭間で揺れる日々の中で、ルーシーはジョージとセシルから大切な「何か」を受け取りました。

二人の男性は彼女に何をもたらしたのでしょうか。

イギリス人淑女としての自信

淑女のルール

当時のイギリス人女性が何不自由なく暮らしていくための最善の方法。それは上流階級の男性と結婚することでした。

しかし望めば相手が見つかるというわけではありません。作中にはこんなセリフがありました。

来年は信託財産が入るわ。

引用:眺めのいい部屋/配給会社:シネマテン

良い家柄だということが読み取れます。だからといって上流階級の男性に選ばれるわけではないのです。

「選ばれる女性」になれるように立ち居振る舞いや教養を身につける必要もあります。

その上でセシルはルーシーを選びました。

基本や規律を重んじる貴族階級のセシルのお眼鏡にかなう女性は、紳士の隣に並ぶことが許される淑女なのです。

これはルーシーの大きな自信になったことでしょう。またこの自信は、後の彼女の決断を後押ししたとも考えられます。

新しい世界を見せてくれたジョージ

良家育ちのルーシーにとって、ジョージは新しい世界を見せてくれる存在です。

「見せる」とは視覚的なものだけでなく、感覚的なものも含めます。

ジョージと出会わなければ、情熱的なキスがどんなものなのか知ることはなかったでしょう。

家柄や階級の差をものともせず、情熱的に求婚される喜びも知らずに終わったはずです。

また婚約者がいながら別の誰かを思っていることへの背徳感も、初めて芽生えたのではないでしょうか。

真実は人を傷つけない

Wilson(ウイルソン) 硬式 テニスラケット ENERGY XL (エナジー XL) [ガット張り上げ済み] WRT311600 グリップサイズ G2

テニスに誘われたセシルは、自分自身について以下のように語っています。

読書以外に脳がない人物、私はそれに匹敵する男なのさ。

引用:眺めのいい部屋/配給会社:シネマテン

本当に「能がない」のかは分かりません。ただ単に俗物的なものを拒絶しているだけかもしれません。

またジョージはセシルを以下のように表現しています。

彼は女性はおろか、誰とも理解しあえない。

引用:眺めのいい部屋/配給会社:シネマテン

同性からこんなふうに評されてしまうのです。

紳士的な振る舞いができる素晴らしい男性であることは間違いありません。

保守的でプライドが高い面が玉に瑕といったところですね。

そんな彼がルーシーから別れ話をされる場面。どうなることかとハラハラする場面だったかもしれません。

しかしセシルは怒るわけでも泣くわけでもなく、最後まで紳士的な態度で彼女の思いを受け入れました。

嘘は刃となって人を傷つけますが、真実はトゲ一つない形でまっすぐ相手の心に届きます。

ルーシーは二人の男性との関わりの中で、思いを正直に伝えることの大切さを知ったのではないでしょうか。

保守的な生活から抜け出すきっかけは誰がくれた?

1000ピース ジグソーパズル モナ・リザ (50x75cm)

別れ話の中に、とても印象的なセリフがありました。ルーシーはこのセリフを、ジョージに言われたことがあります。

あなたは本当は愛していないのよ。本当よ。それはきっと所有物としてよ。絵画とかダヴィンチ画なの。そんなのイヤよ。私は私でいたい。

引用:眺めのいい部屋/配給会社:シネマテン

ジョージが言ったとおり、セシルに選ばれて婚約したものの愛されているとは感じられなかったのです。

ジョージはルーシーを所有物としてではなく「彼女自身」として愛してくれました。

ジョージに情熱的な口づけや求愛をされたからこそ、彼女は「愛されること」の本質を知ったのです。

セシルとジョージという対照的な二人がいなければ、ルーシーの人生は全く別のものになっていたことでしょう。

保守的な階級社会から抜け出すきっかけをくれたのはジョージとセシル、二人なのです。

ルーシーが選んだ道は正しかったのか

 Beethoven:Piano Sonatas / Rubinstein Collection Vol. 56

良家の娘であるルーシーは、周囲にいる大人を見ながら自分のあるべき姿を学び取り、上品な淑女に成長しました。

しかし彼女を幼少期から見てきたビーブ牧師は、彼女を以下のように評しています。

情熱的にベートーベンは弾くが、私生活ではおとなしい。いつの日かきっと、音楽と人生の調和が生まれ、両方とも向上するだろう。

引用:眺めのいい部屋/配給会社:シネマテン

ビーブ牧師は、ルーシーが持っている情熱の火種に気づいていたのです。

しかしルーシーは、ピアノの演奏でしか情熱を表現しませんでした。

感情を表に出すことは、淑女としてタブーだと無意識下で認識していたのでしょう。

セシルはビーブ牧師と同様、彼女の情熱的な一面に気づいていたのかもしれません。

だからセシルは、ベートーベンのような演奏をするルーシーを愛しきれなかったのではないでしょうか。

無意識のうちに閉じ込めていた情熱に気づかせてくれたのが、ジョージです。

情熱的に愛されることで情熱的に愛することを知り、本当の意味で「女性らしい自分」に出会えたのでしょう。

幸せの意味を考えさせられる『眺めのいい部屋』

 眺めのいい部屋

階級や家柄を重んじた結婚が、必ずしも不幸なわけではありません。

生活をする中で相手の魅力が波のように押し寄せてくることもあるでしょう。

お見合い結婚で幸せを掴む方が沢山いることからも分かります。

また本作のルーシーのように、長年信じて疑わなかった幸せの意味が何らかのきっかけで変わることもあるのです。

自分にとって幸せとは何なのか、今一度考え直したくなる作品でした。