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映画『パラレルワールド・ラブストーリー』は東野圭吾の原作小説を2019年に実写化した作品です。
森義隆監督の下玉森裕太を主人公に脇を染谷将太や吉岡里帆で固めて制作されました。
物語は2つの世界の話が同時進行していく三角関係の恋愛物語というシンプルな構造です。
一つが崇史と津野麻由子が恋人である世界でもう一つが崇史の親友・智彦と麻由子が恋人の世界となっています。
果たしてどちらが本当で嘘なのか或いはどちらも本当なのかどちらも嘘なのか…全てが謎のままです。
本稿ではそんなパラレルワールドの正体をネタバレ込みでじっくり考察していきましょう。
またパラレルワールドが脳に関係があるかという疑問や麻由子は誰の恋人なのかという問いも読み解きます。
科学は人間の幸福度を上げるのか?
本作全体の特徴にして直接に言及されないのは「科学は人間の幸福度を上げるのか?」というテーマです。
本作はどうしてもパラレルワールドという表向きの派手なSFガジェットと三角関係にばかり目を奪われます。
しかしそれらはあくまで装飾で実はラブストーリーもパラレルワールドも表面上のまやかしに過ぎません。
二人に共通していたのは理系出身の研究者で同じ会社に勤めていたことです。
たったそれだけのことが自分達はおろか周りの人間まで巻き込んで大変不幸な目に遭わせてしまいます。
本稿はパラレルワールドの奥にある本質をもう一度捉え直し明確にしていこうという試みです。
パラレルワールドの正体
本作はザッピング形式で崇史と麻由子が付き合う世界と智彦と麻由子が付き合う世界が交互に展開されます。
そのことに崇史は違和感を覚えますが、その正体がとうとう終盤で明かされるのです。
果たしてこのパラレルワールドは何が原因で起こったのでしょうか?
記憶の改変で作り出された世界
終盤で2つの世界が実は二つとも違った記憶の改変であることが明らかになりました。
即ち崇史と麻由子が付き合っている世界も智彦と麻由子が付き合っている世界も本物ではありません。
現実は後者に近いのですがこの世界にも幾分記憶の改変故に補正のかかった世界となっています。
しかもややこしいのはその境界線が曖昧過ぎてどこまでが本当でどこからが嘘か分からないことです。
それが正体を分かりにくくしていますが、ではこの二つの世界の正体をそれぞれ考察していきましょう。
崇史と麻由子が付き合っている世界
まず崇史と麻由子が付き合っている世界ですが、これはそのまま崇史の理想を具現化した世界です。
二人が最初に出会ったのは電車でのすれ違いですが、それで恋に至ることなど普通ありません。
それだけならまだしも麻由子と同棲し、かつ三人とも同じ職場で働くと都合が良すぎる設定です。
また牡蠣が苦手なはずの智彦が牡蠣を普通に美味いといって食べるような人間になっています。
ここが決定打となりパラレルワールドだと判明しますが、いずれにしても人間関係が綺麗過ぎです。
ここまで来れば崇史が望んでいた世界をやや誇張した形で描いたもの以外に考えられません。
智彦と麻由子が付き合っている世界
二つ目に描かれている智彦と麻由子が付き合っている世界は現実世界を智彦視点で誇張したものでしょう。
その証拠に智彦が記憶の研究をしていて小学校時代の担任の先生の記憶が変わる話などがあります。
しかも崇史の麻由子への気持ちを知りながら麻由子に崇史を認めさせないと酷い弄び方です。