監督トーマス・ヤーンの手腕ともいえる演出ですが、過激な発砲シーンをみせ、かつ死者を出さない…。
そのことで、ちょっと心温まるコメディタッチな絵が生まれています。
更に、劇中に銃撃戦での死者を出さないことでラストシーンに描かれた「死」が観る者の心に深く刺さってくるのです。
二人にとっての海
病院で最後を迎るはずの二人は、偶然テキーラを見つけ、偶然大金入りのベンツに乗り込みました。
二人は行くべくして海に行ったです。
劇中ではまるで死から逃げるように海へ向かいますが、実は二人は自らの意思で死へと向かっていくのです。
マーチンはすでに海を知っており、雄大な海にいけば死の恐怖が和らぐことを知っていたのでしょう。
海へ行く、ただそれだけの為に無謀なことを繰り返していく二人はまるで少年に戻ったかのように心に忠実に生きていました。
海は二人にとっての終着点ですが、海へ向かうというその行動こそが生きていると実感出来るものだったのではないでしょうか。
ラストシーンでのルディの心境
ネタバレと言うまでもなく最後は死にゆく二人なのですが、本作のラストシーンでは涙した人も多いのではないでしょうか。
軽快でコミカルなストーリーなだけに、最後は余計に切なさが溢れます。
先に旅立ったマーチンを海で見送ったるルディは、どんな心境だったのでしょう。
海に抱かれる思い
病院でマーチンが話していたように、海は一瞬でルディの心を鷲掴みにしたのではないでしょうか。
海のあまりにも大きく雄大な姿は人を圧倒させるものです。
まして、たどり着くまで様々な困難を乗り越えてきただけに、海の雄大な姿はひとしおだったことでしょう。
海は母なる海とも呼ばれています。
母の懐に抱かれたような満たされた気持ちになれたのかもしれません。
悔いなく死ぬことが出来る
天国で海について語り合うことが出来る…。
冗談とは知っていても、漠然と心の隅で安心する自分もいたはずです。
そして、おそらくルディの中でこれまでにない達成感もあったことでしょう。
強盗をし、警察に追われ、更にはギャングにも命を狙われたのです。
真面目なルディには想像も出来ない旅だったことでしょう。
人生のしめくくりは、とてもスリリングで男のロマンに満ちた旅でした。