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映画『エイリアン: コヴェナント』は2017年公開のアメリカ映画で『プロメテウス』の続編です。
1979年の『エイリアン』の前日談という位置付けは『スターウォーズエピソード2』に近いかもしれません。
二人のアンドロイド・デイヴィッドとウォルターをマイケル・ファスベンダーが見事に演じ分けていました。
物語は惑星オリガエ6へ向かう宇宙船コヴェナント号がニュートリノの衝撃波を受けるところから始まります。
本稿では物語の鍵を握るデイヴィッドの目的とその後をネタバレ込みで考察していきましょう。
またコヴェナント号が受け取った信号の意味も併せて読み解いていきます。
産みの苦しみ
本作全体の特徴は物語も制作過程も含めて“産みの苦しみ”が非常に強く感じられる作品です。
原点『エイリアン』のヒットは時代の熱気とSFホラー自体が未開拓のジャンルだからでした。
半分以上が時の運に恵まれて大ヒットした作品を外付けで掘り下げなければいけないのです。
即ち作り手は自分が産み出した作品を仮想敵にして作るという難題に挑むこととなりました。
それは正しく自身が創造したデイヴィッドに苦しめられるショウ博士の姿に重なります。
そのような“産みの苦しみ”が物語と現実の双方に存在する一種の自己批評型の作品ではないでしょうか。
デイヴィッドの目的
物語の鍵を握るのは前作『プロメテウス』でショウ博士に産み出されたアンドロイド・デイヴィッドです。
前作のラストで二人はエンジニアの宇宙船に乗ってエンジニアの故郷となる惑星へ探しに行きました。
しかし本作ではそんなデイヴィッドが想像を絶する姿で現われますが、彼の目的は果たして何なのでしょうか?
人類の起源を探る
前作からの設定を継承していることを踏まえると、デイヴィッドの行動理念は人類の起源を探ることです。
デイヴィッドの心はあくまでも創造主であるショウ博士のものであって本作でもそれは一貫しています。
惑星の生命体を次々に滅ぼし挙句の果てにはショウ博士を実験に使ったことも全てがその理念ありきです。
プログラムが極端な方向に暴走してしまっただけで根っこの部分は何も変わっていません。
ではなぜデイヴィッドは暴走してしまったのかを具体的に掘り下げていきましょう。
ショウ博士の愛情への餓え
暴走の原因はショウ博士が長きに渡るコールドスリープに入ったことで生じた愛情への餓えでした。
これによって長い間独りぼっちで寂しい想いをすることになったデイヴィッドは耐えられなくなります。
アンドロイドといえどデイヴィッドは創造主であるショウ博士の愛情があって初めて上手く行くのです。
ここでショウ博士がデイヴィッドが狂わないようにプログラムしておけば結果は違ったでしょう。
ですがそれを怠ったばかりに彼は寂しさを募らせ暗黒面へと到達して暴走するに至ったのです。
そしてそのプログラムと感情の暴走の一体化がとんでもない答えを導き出します。