また、人生の負け組とも呼べる自身とは正反対の世界に生きる、遠藤の車に八つ当たりをするほど、荒んだ心境でした。
しかし、地下帝国での労働のなかで出会った、石田やゲームの敗者達との交流や勝負のなかで、心の底から自身の人生を変えようと考え始めるのです。
そして、鉄骨渡りにて石田から想いを託されたカイジは、Eカードで見事勝利し、生還した後は石田の想いを遂行しています。
序盤では見られなかった、前向きで晴れやかな表情を浮かべるなど、勝利を通して、カイジの人生観や心境が逆転したことを表しているのです。
利根川とカイジの人生の「逆転」
人生逆転ゲームを通して変化があった人物は、カイジ以外にも、Eカードで敗北した利根川にも当てはまります。
帝愛グループの会長の前で行われたEカードにおいてカイジは、優秀な利根川の心理を利用して見事勝利し、地上への生還を果たしました。
対する利根川は、絶対的に有利な立場にありながら、カイジの策にはまって敗北し、会長から地下労働施設での永遠の労働を言い渡されてしまいます。
人生の負け組から脱出したカイジと、華々しい生活から転落した利根川の姿は、まさにサブタイトルである「人生逆転」表現しているといえるでしょう。
結局帝愛が主催するゲームは何のために存在するのか?
作中には、限定ジャンケンやEカードをはじめとした、参加者達の心理を揺さぶる様々なゲームが登場しています。
ごく普通のギャンブルのように見えますが、実はゲームが行われる理由には「参加者の人生を変える」以外にも様々なものがあると考えられるのです。
ここでは、作中に登場した数々のゲームが行われる理由について考察していきます。
富裕層の娯楽
主人公カイジ達が参加した数々のゲームですが、映画では帝愛グループが主催しているということ以外、ほとんどの情報が謎に包まれています。
しかし、作中で唯一、人生逆転ゲームの背景が垣間見えるシーンといえるのが、地下帝国から選ばれた者のみが参加できる鉄骨渡りです。
地上から約10mの位置に設置された、電流が走る鉄骨を渡りきるという、まさに死と隣り合わせな内容のゲームとなっています。
この時実は、参加者が鉄骨から落下した際に、ホテルの一室から参加者の様子を見る富裕層達の姿が映っているのです。
高級ホテルで豪遊している富裕層達は、危険な鉄骨の上で「死にたくない」ともがき、時に参加者同士が落とし入れ合う姿を見て楽しんでいます。
つまりゲームは、参加者をギャンブルの駒に見立て、その行動やゲームの結果を楽しむ娯楽であると考えられるでしょう。
一度は団結した参加者が、命の危機をきっかけに争い、敗者と勝者に分かれる様を観賞するという内容は、さしずめ命そのものを弄ぶ娯楽といえます。
地下帝国の労働者の確保
人生逆転ゲームは他にも、同じく帝愛が管理する地下帝国で働く労働者の確保を目的としたゲームであるとも考えられます。
その理由として、作中に登場するゲームに、必ず設定されている「ゲームに負けた者は地下帝国での労働を科せられる」というルールです。
作中で、地下帝国に連行された参加者達は、採掘や工事などの仕事内容が割り振られ、時には死傷者が出るほどの危険な環境で働かされます。
仕事において、人件費がかからなくて替えのきく人間が多数必要となるとを考えると、帝愛の事業運営において重要なものであるといえるでしょう。
そのため、ゲームに敗北して多額の負債を負った参加者達を使い捨ての労働者にすべく、借金返済や保証人をエサにおびき寄せていると考えられます。
まとめ
「カイジ 人生逆転ゲーム」は、命をかけたギャンブルに挑戦するカイジ達の、高度な心理戦が注目された映画といえます。
しかし、原作の「賭博黙示録カイジ」では、同じゲームでも展開や人物の描かれ方異なっているため、原作と比較しながら観るのも良いでしょう。