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映画『SHADOW/影武者』は2018年公開の三国志の荊州争奪戦をアレンジした中国映画です。
日本では2019年9月6日に公開され、チャン・イーモウ監督を中心に制作されました。
主演の都督をダン・チャオが、そして小艾を彼の妻スン・リーが演じたことも有名な話です。
また主人公がアクションで用いる武器が槍や剣ではなく”傘”というのも斬新でしょう。
物語は影武者が自由と引き換えに大軍の待ち構える敵地へ向かう運命の行く末を描いています。
本稿では都督が影武者を刺した理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
またラストで残された小艾がしたことや影武者のその後についても掘り下げていきます。
闇に葬られし真実
本作で語られているのは「闇に葬られし真実」ではないでしょうか。
如何にもド派手なアクションや白黒をベースにした重厚感のある映像美にどうしても目を奪われます。
しかしその一方で本当に見るべき真実は巧妙に隠されており、それは決して表に出ることはありません。
本作はその魏・呉・蜀の三国で行われている裏の駆け引きを王と都督、そして影武者に落とし込んでいます。
より近い視点で人の歴史がどのようにして動くのかを近い視点で知ってもらいたいからでしょう。
その巧妙に隠されている闇に葬られし真実に焦点を当てて考察していきます。
都督が影武者を刺した理由
本作最大の見所は都督・王・影武者の終盤での壮絶な立ち回りにあります。
ここで都督は上手く王を出し抜いて刺し殺しましたが、何と直後に影武者も刺し殺しました。
自身の分身にして腹心の部下といえる影武者をなぜ都督は殺そうとしたのでしょうか?
小艾を奪われたくなかった
最初の理由として挙げられるのは都督が妻・小艾を奪われたくなかったからです。
決戦前夜に泣いて震える影武者に小艾がそっと寄り添い、二人は男女の関係に発展します。
しかし不運なことにこれを都督が見てしまった、即ち不倫現場に出くわした格好です。
幾ら私情で思うところがあったとしても人の妻を許可無しに奪われてはいい気はしないでしょう。
これに関しては完全に影武者と小艾の二人に責任があり都督は何も悪くありません。
国の乗っ取り
二つ目に都督が王を殺した後に目論んでいたのはあくまでも「国の乗っ取り」です。
王は元々平和主義で弱小国故に無益な争いは避けたいというタイプの人間でした。
一方都督は影武者に王の前で都督として過激な振る舞いの数々をさせているのです。
つまり彼が目論んでいたことは王亡き後自分こそが国王となって従わせることでした。
このまま影武者を生かしておけば死後彼がのさばるかもしれないと思ったのでしょう。
そうした疑心暗鬼を生じた結果ラストであの行為に走ったのではないでしょうか。
影武者の独立を認めたくなかった
そして三つ目に戦いの中で自由を求めてどんどん強くなる影武者を認めたくなかったのでしょう。
上述した妻との関係もそうですが、都督が影武者に求めたのは都合の良い駒でしかありません。