その瞬間の映像を観た視聴者の感情が『正解』ということでしょう。
しかし今回のような事件の最中に『現場にいた第三者』から真実を聞かされた視聴者は感動したかもしれません。
澄田は今回の出来事をきっかけに報道に戻れるかもしれませんが、おそらく戻らないでしょう。
それは最後にシーンで澄田自身が語っています。
澄田の報道番組に対する思いとは
澄田は局の看板である夜の報道番組のキャスターである自分に誇りを持っていました。
しかし自分の持つ人間性が仇となった事件から『自分の価値』への自信に揺らぎが出ています。
ワイドショー担当に左遷されたと感じている澄田。
自分は本当にこれでよいのかと自問しつつ日々の仕事をこなしているだけの日々でした。
澄田にとって報道番組や現場取材は戻りたいけど戻りたくないトラウマのような存在です。
妻に謝った理由
災難続きの一日を終え帰宅した澄田の前に立ちはだかるバリケードは笑えました。
その隙間からのぞく怒った妻の顔を見て澄田は素直に謝っています。
長澤まさみ演じる小川圭子とは『何もなかった』と思っていた観客は不思議に思ったことでしょう。
彼が妻に謝ったのは『あんな噂を立てられるようなことをしてごめん』という気持ちです。
監督が長年連れ添った夫婦の心情をラストシーンにした理由は『初心に戻る方法』を描きたかったのだと思います。
日々働く人間にとって『なぜ今日も働くのか』と考えることは稀ですし、なぜ夫婦でいるのかを考えることも同じです。
やりたいことでもなくただ使命感だけで神経をすり減らしている大人に投じた一石なのかもしれません。
脇を固める演技派俳優たち
フジテレビでもヒット番組を量産してきた放送作家である君塚良一がテレビ局の舞台裏をリアルに再現した本作。
主演の中井貴一はもちろん脇を固めた俳優陣も演技派が揃っていましたね。
少々迷惑な性格の女子アナ小川圭子を長澤まさみが見事に演じています。
澄田の名誉を回復した三木沙也の志田未来や松岡宏二を演じた林遣都もそれぞれのキャラクターになりきっていました。
もちろん時任三郎や松重豊などのベテラン陣の演技も素晴らしかったです。
映画『グッドモーニングショー』はテレビ局のシビアさや視聴者の無責任さを軽いタッチで描いた俊逸な作品でした。