このエッシャーの「上昇と下降」は同じ場所を何度も繰り返し周る者や諦めて留まる者もいる図柄で、まるでこの病院にいる疾患者のようでした。
栗田はジグソーパズルの完成前に退院を果たすので、この無限階段から抜け出したということになるのでしょうか。
無限階段からの脱出
摂食障害のサエちゃんは約束通りご飯を完食しました。しかし、この先もきちんと食べ続けることができるのかが課題となります。
そして、ミキも“サエちゃんのため”という目的がここで途切れ、自分に課す治療へのモチベーションが失われ食べては嘔吐が始まりました。
明日香だけは“ダンスレクリレーション”という新たな気分転換がみつかったので、退院までの目標に近づいたと言えるのです。
栗田が運び込まれた意味
栗田の症状は「双極性障害」
栗田は自分のオーバードーズを“事故”と言い、夫を“医師”と触れ回っていましたが本当にそうだったのでしょうか?
おそらく彼女は双極性障害による万引きや高額な買い物などをし、そのことへの罪悪感からオーバードーズを繰り返していたと思われます。
栗田は本来真面目で優しい女性ですから、夫への自責の念が強く出てしまい自死したくなってしまうのでしょう。
退院は正確な診断によるものだったのか?
栗田の外泊許可や退院の判断をしたのは、その時の担当医師が患者をすぐに退院させてしまう松原でそれを栗田は知っていたのでしょう。
顔の様子を見ればわかるという松原の目を欺く冷静さが栗田にはあり、外泊した際に退院許可を出すよう夫を説得したと考えられます。
退院まで漕ぎ着け明日香だけにアドレスを渡した時には、もう戻らないと誓ったのでしょうがまだ退院に至るまでの状態ではなかったのです。
明日香のリカバリーストーリー
明日香はこのオーバードーズをきっかけに精神病院の閉鎖病棟に入ったことで、双極性障害を発症せず踏みとどまれたでしょう。
オズの魔法使いのように、江口には患者に対する優さをミキには明日香をかばう勇気をサエには食事で血糖値を与えることができました。
明日香はドロシーのように魔法はつかえませんが、舞い戻ってきた栗田の連絡先を捨てたことで新しい生活を取り戻すと決意します。
この作品は閉鎖病棟で過ごした14日間で人生を見つめ直し起死回生する明日香を通し、精神疾患という重い内容をコミカルに表現した映画でした。