亡霊という姿で彼女の人生に大きく関わってきたジョゼットは、新たな人生を歩みたいと願うヴィクトリアをコリンズ家へと導きます。
残留思念と過去の記憶
ヴィクトリアには元々ジョゼットの記憶はありませんでした。
しかし、彼女がコリンズ家にやってきた途端、亡霊ジョゼットは崖から落下する自分の死に際の行動を繰り返すように…
毎夜のように繰り返す行動は、まるでジョゼットの記憶をヴィクトリアに思い出せと言っているようにも見えます。
さらにラストシーンにおける身投げ。自分の意思で崖から飛び降りたことで彼女の魂はジョゼットと1つになったのです。
バーナバスによってヴァンパイアになったのはいわゆる復活の儀式のようなもの。
ヴァンパイアへと生まれ変わった彼女は、ヴィクトリアの肉体で復活したジョゼットなのではないでしょうか。
バーナバスの呪いの行方
バーナバスの呪いは、永遠の孤独を1人で生きてかなければならない姿に変えられたことです。
我が呪いは、遂に 解けた…
引用:ダーク・シャドウ/配給会社:ワーナー・ブラザース
ラストシーンをこう締めくくるバーナバスは、愛する伴侶と共に永遠の時を共に生きることになります。
彼が唯一愛した魂、つまりジョゼットでありヴィクトリアもまたヴァンパイアとなり彼と共に生きることを死をもって誓いました。
そう、彼のうけた呪いはヴァンパイアという異形の存在になることではなく永遠の孤独だったのです。
愛する人とともに生きる人生は喜びであり、呪いではありません。
ヴィクトリアが彼と共に人生を歩むと決めたとき、バーナバスの呪いは解けたのです。
時代を超えて生まれ変わったゴシック作品
「ダーク・シャドウ」は、アメリカの連続ドラマを元に映画化した作品です。
ゴシックホラーの金字塔ともいえるティム・バートン監督の手にかかったこともあり、現代風でコミカルなノリが魅力の作品へ。
ゴシック・ソープオペラの風潮を感じさせない、なんともテンポの良いゴシックホラーへと生まれ変わったのです。
進化したメロドラマ
ソープオペラは日本でいうところの昼ドラ・メロドラマで、女性をターゲットにした愛憎劇が多い風潮がみられます。
本作も物語の中心はアンジェリークを中心としたどろどろの愛憎劇。
バーナバスのキャラクターを少しでも変えれば、このようにコミカルでテンポの良い作品には仕上がらなかったことでしょう。
短時間で魅せる「映画」として完成した「ダーク・シャドウ」は、ソープオペラの枠を超えて新たなゴシックドラマと相成ったのです。
キャラクターを掘り下げた新ドラマにも期待
映画ではバーナバスとアンジェリークを中心に物語が展開。悪の魔女を退治することで幕を閉じました。
しかし全体を通して観ると、ヴィクトリアを始め魅力的なキャラクターが多い割にスポットの当たるシーンが少なかったのも事実です。
ラストシーンでのヴァンパイアとして目覚めたジョゼットやホフマン博士のその後も気になるところ。
個々のストーリーを掘り下げる続編ドラマ化にも期待してしまいます。