みゆきが本当に望んでいたのは傷ついても格好悪くても良いから自分の気持ちに正直に生きることでした。
「幸世くんと出会いたくなかった」はそれを顕在意識で恥ずかしいと蓋をしたいみゆきのいじらしさでしょう。
振り回すような言動・行動を仕掛けながらもいざ幸世に同じことを仕返されると誰よりもショックを受けます。
みゆきは本来幸世と同じでどこまでも不器用で泥臭い生き方しか出来ない、少しおませな普通の女の子です。
幸世共々それに気付くまでを描いたのが本作の物語だったのではないでしょうか。
幸世を警戒しろと電話した理由
ダイスケは幸世と仕事でインタビューという名のバトルを演じた後、みゆきに幸世を警戒しろと電話します。
それまで何があっても余裕を崩さなかったはずの彼は更にこの後妻と離婚までするのです。
こんな極端な言動・行動に打って出た理由は何だったのでしょうか?
優等生思考
ダイスケは非モテ童貞オタクの幸世とは正反対に優等生思考の権化・象徴として描かれています。
イベントを仕切るオーガナイザーである彼は人生を順風満帆に生きてきたのでしょう。
つまり常識的思考や世間体といった「人の目」を気にしながら頭で考えて生きているのです。
その彼にとって全く正反対で自分の本音に正直に生きる幸世はその思考の枠から外れた人でした。
だからこそ優等生思考に当てはまらない幸世を危険人物だと判断したのではないでしょうか。
優等生はそうでない人を排除したがる傾向にありますが、正にそれが幸世との邂逅で出たのです。
ブーメラン発言
しかし、一歩引いて考えればダイスケのこの発言がブーメランであることが分かります。
幸世に警戒しろなどと電話しつつ自分がやっている不倫への罪悪感は全くありません。
またみゆきと付き合うためなら簡単に妻を捨ててしまえる辺りに人間味の希薄さが出ています。
そうした自身の言行不一致のおかしさを棚上げして警告するおかしさを演出しているのです。
優等生こそが一番危険であることを示しているのではないでしょうか。
本音で生きる者には勝てない
そして三つ目に本音で生きている幸世には勝てないことを示すためではないでしょうか。
妻と離婚までしたにも関わらず、彼自身が望んだ筈のみゆきは手に入らなかったのです。
それもその筈、警戒しろという忠告も本気でみゆきを思いやってのことではありません。
本気で心配しているならもっと本音でみゆきに迫っていけば良いのに理性でかっこつけるのです。
だから心から本音でぶつかる泥臭い幸世の生き方にいざという所で敵わないのではないでしょうか。
思考は嘘をつくが身体は嘘をつかないという真理の暗黒面を象徴したのがダイスケでした。
飲み会にるみ子を連れて来た意図
さて、ここでもう一つ気になるのはみゆきがるみ子を二度目の飲み会に連れてきた意図です。
るみ子はこの飲み会がきっかけで幸世を好きになりますが成就せず見事に振られてしまいます。