SNSから拡散した動画を元に、フードを目深にかぶった白人男性をダークヒーローとして持ち上げる風潮が生まれたのです。
賛否両論ではあるものの、否定意見の少なさに彼は自分の行為は間違っていないと確信したのでしょう。
自分の復讐のためだけではなく、街の犯罪を消すために「シカゴの死神」はより頻繁に活動するようになったのです。
模倣犯が被害者に
「シカゴの死神」の自警行為にも問題が浮上します。
ダークヒーローを真似た正義の模倣犯が、犯罪者の手で返り討ちにあったのです。
知名度の拡大は犯罪者を抑制する反面、正義感の強い一般人を不幸へと導いてしまいました。
子を持つ父親という同じ立場の人間が死んだことで、ポールも感じることがあったのでしょう。
母を亡くした娘を残して命を落とすかもしれないという問題に気づいたことで、ポールの行動は慎重になったように感じられます。
密猟者にためらいなく発砲する義父
妻の葬儀の後、密猟者を見つけた義父はためらいもなく密猟者を追い、ライフルで発砲します。
警察が街を守ってくれると皆信じてる。…だがそれは違う
警察が駆けつけるのは犯罪が起こった後だ。 手遅れさ。
引用:デス・ウィッシュ/配給会社:ショウゲート
目に見えない平和に守られて生活していたポールにとって、義父のこのセリフは大きな影響を与えたことでしょう。
事実、銃も何も置いていない。自衛すらできない環境で亡くなった妻を考えると義父に向ける顔もありません。
犯罪者に対してためらいなく発砲する義父の姿は、自分の身は自分で守るという自警の精神をまざまざと体現していたのです。
葬式中の義父の言葉
そんな娘にも先立たれてしまった…こんなハズでは無かった。
これが神の意思だと言えるのか。こんなことが許されるのか…
引用:デス・ウィッシュ/配給会社:ショウゲート
義父の悲痛なセリフは事なかれ主義だったポールの心に復讐の火種をまきました。
それまでのポールであれば、人を殺した犯罪者であれ他人事のように治療し、素知らぬ顔で生活を続けていたことでしょう。
しかし、自分の家族が犯罪に巻き込まれたことにより、ポールや義父の中には犯人に対する憎悪が生まれたのです。
「許せない」と告げる義父の言葉は、ポールの中に眠っていた悪に対する正義をゆさぶり起こしたのかもしれません。
ポールにぶつけられない怒りの表れ
夫でありながら娘を守れなかったポールに対し、ベン(義父)は少なからず怒りを感じた部分もあったのでしょう。
ポールに語るベンの言葉の端々には、哀愁だけではなく不条理な娘の死に対する批判がいくつも織り込まれています。
密猟者への発砲も、ベンの自警に対する意識の高さと共に、ポールに直接ぶつけられない怒りを密猟者にぶつけていたとも考えられます。
本当に大事なものを守りたいと思ったら、自分で行動するしかない。
引用:デス・ウィッシュ/配給会社:ショウゲート
この言葉こそ、ベンの行動を裏付ける最たるものなのでしょう。
街の実態を語りながら、何故娘を守れなかったのだという気持ちをポールに語っていたのです。
指で銃を撃つマネをした意味とは
ラストシーンで、ポールはひったくり犯に声をかけ指で銃を撃つマネをしました。
死神を引退したにもかかわらず正義の執行者のような行動をとったのはいったい何故だったのでしょうか。
死神のマネで犯罪を牽制
ひったくり犯は声をかけられたことで一瞬動きを止めます。
逃げようとしていた犯罪者の動きを止められたわけですから、ひったくりに対する牽制としては十分でしょう。