彼は昔からの因縁もあって龍彦と殴り合いの死闘を演じ、龍彦に逃がして貰います。
しかし、葉山の手下に射殺されてしまい、大きな喪失を龍彦は経験することに。
そこに込められた龍彦の想いに関して掘り下げていきましょう。
自分を偽る卑怯者
実は秀吉は偽名であり本名は古屋ダイキという、大人しい秀才タイプの子でした。
彼は優等生でありながら常に孤独で、仲間に囲まれている龍彦に複雑な思いを抱えています。
それが歪んだ形で発展した結果アゲハを薬物中毒にする外道に成り下がっていたのです。
それは真っ直ぐ筋を通す生き方を重視する龍彦とは全く相容れない生き様ではないでしょうか。
自分の名前を偽り弱者をいじめ続けて平然としていられる卑怯者に映っていたはずです。
お前の人生間違いだらけなんだよ!
引用:新宿スワン/配給会社:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
この一言が龍彦から見た秀吉の印象を余すところなく物語っています。
真の友達になれる
対等の勝負をしたことで龍彦は秀吉と真の友達として理解しあえたのではないでしょうか。
男という生き物はいくつもの言葉よりも体や拳を交えて語ることで本能的に理解する闘争本能があります。
だからこそ歩んできた道は違ったものの、自分と同じ高みへ来た秀吉の実力を喧嘩で認めたのでしょう。
元々頭の切れる参謀タイプですから、それこそ将来的には彼を二番手につける構想もあったかもしれません。
もっともそんな彼の思いは全て葉山の手下に無残に射殺される形で踏み潰されてしまいますが…。
義理人情だけでは救えないもの
結果として秀吉を失ったことを悔いる龍彦ですが、ここで学んだのは義理人情が全てではないということでしょう。
秀吉のことだけではなく栄子やアゲハという数々の大切な人達を秀吉は救えなかったのです。
真虎は「歌舞伎町に呑まれただけだ」と窘めますが、それで納得出来れば苦労はないでしょう。
よかれと思ってやったことが裏目に出ることもまたあることを再三教えられた格好です。
社会の理不尽へどう立ち向かえばいいのかを秀吉の死を通して学び、彼は強くなりました。
何が正しくて何が間違いか分からない
この作品を通して描かれていることは「何が正しくて何が間違いか分からない」ということです。
確かに本作に出てくる風俗嬢や裏のスカウトマンはいってみればヤクザとほぼ近い世界でしょう。
しかし、そこに居る人達も好き好んでこの世界に身を窶している訳ではありません。
様々な出会いや環境、時の運などが複雑に作用してその立場に居るべくして居るのです。
風俗嬢だって好きで体を売っているわけではなく、あくまで仕事としてやっているに過ぎません。
だからこそ龍彦はそんな世間から忌避される人達を少しでもハッピーにしようとしたのでしょう。
裏の世界にだって裏の世界なりの筋の通し方や正義があることを本作はしっかり示してくれています。
物事をフラットに考える
本作が龍彦を通して伝えてくれる一番強いメッセージは物事をフラットに考えることの大切さです。
社会的少数派として疎まれる裏の世界の人達は確かに決していい目では見られないでしょう。
でもそこに居る全ての人達が本当に悪人なのかというとそうではありません。
寧ろ社会的少数派として忌み嫌われる立場だからこそ人の弱さや痛みが分かるのではないでしょうか。
少なくとも龍彦はそれを愚直に体現し、真虎を始め彼の仲間もそんな強さを認めています。