そこには、偉大な二人が作り上げたような人間の繋がりのドラマもありません。
そうした満たされなさから脱却するために、アドニスはプロを目指すことを決めました。
独り立ちしたかった
本当の親子ではありませんが、それでも二人の様子から親子仲は良好であることが伺えます。
しかし、アドニスの人生はある意味では自分を救ってくれた義母のための人生でもありました。
誰もが羨むようなサラリーマン人生に身を置いていたのも母のためです。
ですが、アドニスの心の中にある父への思いは今の人生とは相反するものでした。
このまま母と一緒にいたのでは自分の心に正直に生きることはできない。
プロボクサーを目指したのは、母から独り立ちしたい思いもあったからです。
自分の存在を証明するため
アドニスがプロボクサーを目指した理由は複数ありますが、中でも一番大きいのは自分の存在を証明するためです。
アポロの愛人の子どもとして生まれたアドニス。
確かにアポロの子ではありますが、アドニス自身はそんな自分自身に誇りを持てないでいました。
その自身の無さも、物質的には恵まれていても心の空白に繋がっていました。
自分の存在を証明するには何もボクシングに限らなくてもよかったはずです。
しかし、アドニスがどうしてもやりたかったこととは父と同じボクシングの道でした。
恐らく、アドニスに流れるボクサーの血がそれに向かわせたと考えられます。
現実でも、親子二世代のボクサーは数多く存在しています。
アドニスにとって、プロボクサーを目指すことというのは自分探しの旅という側面もあったと推測できます。
ロッキーの孤独
かっての主人公・ロッキー。今作でロッキーが抱えていたものは何だったのでしょうか。
家族不在の孤独
アドニスが訪ねて行った時に、ロッキーは一人で暮らしていました。
このことから、ロッキーは孤独を抱えて生きていることが推測できます。
物理的な孤独だけでなく、精神的にも孤独です。
一見すると飄々としているように見えますが、もう以前のようなファイティングスピリッツはありません。
年齢的なものもありますが、生きることへの気力も減ってきていることは癌の治療を拒否している姿からも伺えます。
ボクシングと死への思い
孤独なロッキーにとって、唯一の願いは妻であるエイドリアンの所に逝くことでした。
しかし、裏を返せばそれは死を望んでいることに他なりませんでした。
息子はまだ生きており、本質的には孤独ではないにも関わらずです。
もうどうやったとしてもボクシングの試合に出れる年齢ではない。
これまでのシリーズでも引退を決意していたロッキーですが、その度に再び戦いに身を置いていました。