この状況は映画の中だけではなく実際に起こりうる現状で、まさに負の連鎖を描写しています。
これは元犯罪者だけの問題ではなく、刑期を終えて出所した彼らをどう受け入れるのかという私達の問題でもあります。
更生して娘のために働こうと決心したスコットの様に希望を持って出所した人もいるはずです。
最小のヒーローの背景にはこの様な社会的な闇があるのかと思うと、彼の活躍を手放しで喜ぶことは難しいのではないでしょうか。
正義感を問われる
スコットは会社の不正を暴露したことで、窃盗罪の罪をかぶり逮捕されています。
根っからの犯罪者ではなく、正義感の強い男性なのです。この正義感があだとなり犯罪者へと落ちていきます。
もしスコットに正義感がなく会社の不正を見逃していたらアントマンというヒーローは生まれていなかったでしょう。
しかし劇中のスコットの持つ正義感は方向性が少し歪んでいるとも取れます。
ヒーローの必須条件ともいえる正義とは、どんなものなのかを考えさせられる作品になっているのです。
危険なのは……科学の力or人間
アントマンが戦うのは、科学技術を悪用しようとしている ダレン・クロスです。
行き過ぎた科学技術に警笛が鳴らされる今、科学技術の在り方はどうあるべきなのでしょうか。
止められない科学技術
物体を縮小させることが出来る「ピム粒子」は、冷戦時も使用されています。
アイアンマンもそうですが、MUC作品では化学力を戦争に使用するシーンが多く描かれます。
アメリカが戦争に近い国であることにも関係していますが、化学力が軍事力に直結していることを示唆する内容です。
しかし化学技術は止めようと思っても止まるものではありません。時に狂気として科学者を虜にするのです。
MUC作品での警告
アントマンでは優れた化学力の為に、ハンク・ピムは妻のジャネットを極小世界であるクァンタム・リールに消してしまいます。
化学力は強力な軍事力になると認めたうえで、その上に犠牲がある事をしっかり描くのがMUC流となっています。
自分が開発したもので自分が苦しむという設定は、アイアンマンでも使われている設定です。
怖いのは科学ではなく、それを悪用する人間自身の方
劇中には化学力を悪用するダレン・クロスが敵役として登場しています。
行き過ぎた化学力という言葉で非難される化学の力ですが、やはり怖がるべきは人間の行動です。
善を前提に生み出された化学でも、悪用し私腹を肥そうと思う人間がいる限りそれは脅威となります。
アントマンを観る際に、化学の力にフォーカスを当てて観ていくとまた違った一面が見えてくるでしょう。