祖母が初代、母が二代目としてエリーで丁度三代目となり、下手すれば彼女の代で潰れるでしょう。
この後継者問題こそ彼女が奥底に感じていた苦悩だったのではないでしょうか。
円安ドル高
二つ目の問題が円安ドル高という、輸出入や物販を行う企業が抱える問題です。
エリーの継ぐコーヒー農園と青木の継ぐ和菓子屋「寛政堂」はこの問題を抱えていました。
アメリカ本土の取り引きも日本との取り引きもこの経済問題で上手く行きません。
そりゃこんな経済問題など毎日を自堕落に生きてる金銭感覚が杜撰なおじさんに分かるわけがないでしょう。
お見合いをせずとも、そもそもおじさんとエリーは全く同じ土俵にすら立っていないのですから。
こうしたお金の問題は一生付きまとうものであるからこそ根深い悩みのタネとなるのです。
青木との関係
そして一番の問題がラストで結ばれることになる青木という人間との関係でした。
思えば経済問題以上に人間関係こそがエリーの一番の悩みだったのかもしれません。
青木のアプローチはしつこく実家を弟に譲って駆け落ち覚悟してまで結ばれようとしたのです。
最終的におじさんが譲歩・説得したことで何とかなったものの、最善の結末ではないでしょう。
上記した同族経営の悩みや経済問題は本質的な解決を何一つ見ていないのですから。
結局実家を継ぐのか自分の夢を追うのか、宙ぶらりんなまま結論を出すことになりました。
エリーの悩みはきっと死ぬまで続いていくことになるでしょう。
格好よくない大人たち
ここまで様々な考察を展開しましたが、面白いのはこれらがあくまで雪男の作文であるということ。
つまりおじさんにしてもエリーと青木にしても、実物ではなく雪男の脚色の可能性があるのです。
いずれにしても雪男から見た大人達は格好よくはないことが描写の数々から窺えます。
子供から見た大人が必ずしも憧れで格好いいわけではないことが本作のメッセージでしょう。
どんなに仕事して稼いでいても間近で一緒に居れば良い点だけじゃなく悪い点も見えてくるのです。
本作の面白味は決して子供視点で美化されない大人達の滑稽さ・面白さにあるのではないでしょうか。
成功よりも失敗から学ぶ
いかがでしたでしょうか?
本作は一見ダメな大人達の日常を面白おかしく描いただけのようでいて、一つ鋭い視点があります。
それは成功よりも失敗からの方が実は多くを学べるということではないでしょうか。
世の中成功法則を真似して上手く行かないのはその成功法則がその人個人で見つかった法則だからです。
それよりも寧ろ失敗法則から「何をやってはいけないのか」を学びやめていく方が意外と伸びます。
おじさん・エリー・青木と三者とも「何をやってはいけないのか」を雪男をモデルとして示しました。
そしてそれを面白おかしい作文に仕立てる創作力がある雪男は凄く強かな大人になるでしょう。
そうした視点から見てみると、また一つ別の面白さを含んだ作品に見えてくるのではないでしょうか。