気が弱く、いじめの対象になっていたシュンは、周囲を蹴散らす度胸もなく確かに弱い存在かもしれません。しかし、杏奈がクリアできないほど難易度の高いゲームを作る才能を持っています。
また、自作ゲームを元に展開されていることに気づいたシュンの冷静な判断が杏奈への適切な助言に繋がり、彼女を救いました。
つまり、自分は何の取り柄もないつまらない人間だと思っていても、実は適材適所、輝ける場所があるというメッセージが埋め込まれているのです。
強さとは何なのか
杏奈は「変則プログラムを組んでいる」という難易度が高いゲームに果敢に挑戦したのでしょう。その際にゲームの世界に迷い込んでしまったのだと考えられます。
そこではシュンは既に死んでいますし、絵に描いたような「悪い輩」もいます。その上、青鬼には追いかけられるという不幸の連続です。
更に、杏奈は弟を事故で亡くしています。友人には「自殺だろう」と噂され、心が淀みきっている中での出来事です。
この状況から抜け出す助けとなったのは、シュンがゲームに埋め込んだ設定でした。
閉じた扉を自分で開ければ状況が変わるという設定を思い出したおかげで、杏奈は絶望的な状況から現実世界に戻ることができたのです。
ここから読み取れることはただ一つ。行動を起こさなければ何も始まらない、という点に尽きるでしょう。
ゲームは終わらない
全てが終わった瞬間、杏奈とともにゲームをしているシュンの姿がありました。シュンが生きているのです。
ゲーム画面には「CLEAR」の文字が映し出されます。シュンが生きていて、ゲームはクリアできた。元の世界に戻れたのだとホッとしたはずです。
しかし次の瞬間、画面には「NEXT STAGE」の文字。
クリアしたのは一つのステージでしかなく、ゲーム全てをクリアしたわけではないのです。
つまりこのゲームは続いていて、次のステージが待っています。ゲームはステージが上がるごとに難易度を増すのが一般的ですから、次は同じようにクリアできるか分かりません。
いつ、どのタイミングで館へと引き込まれるのか。そんな恐怖を常に抱えながら、杏奈は生きていくしか無いのでしょうか。
不用心な現代人への警鐘
一個人が作ったゲームから始まる恐怖を描いた映画『青鬼』。
物珍しいものや恐ろしいものへの好奇心が、大きなトラブルの引き金になることは珍しくありません。
電車で隣に座った人や道ですれ違った人、SNSで繋がっている人やいつも親切にしてくれる隣人。その中に実はモンスターが潜んでいるかもしれません。
人と人とが疎遠になる一方で、ネットを介した繋がりばかり密になっていくというアンバランスな現代社会には、目に見えない落とし穴が沢山空いています。
その穴に気づかず無防備なままで歩いていると、青いバケモノに肩を叩かれるかもしれません。