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映画『容疑者Xの献身』は2008年にガリレオシリーズの劇場版として映画化された作品です。
フジテレビの月9枠のドラマシリーズでは『西遊記』『HERO』に続き三作目となります。
原作は東野圭吾、スタッフ・キャストは主演の福山雅治が中心なので安定した作りです。
物語は天才物理学者・湯川と大学時代の友人にして天才数学者の石神との天才対決となっています。
本稿ではラストで靖子が罪を自供した理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また石神が工藤を信用できると言った理由や友を告白する湯川の心情にも迫っていきます。
道を違えた二人の天才
本作におけるメインの見所は道を違えた二人の理系学者の対比にあるのではないでしょうか。
テレビシリーズと見比べて本作がやや異色なのは湯川の心情の揺れ動きがあることです。
湯川という人間はとても人間とは思えない程合理主義でドライな物理学者として描かれています。
それは彼の旧友が犯人の回であっても例外ではなく、終始その冷静沈着さを崩すことはありません。
しかし、本作では湯川が珍しく複雑な表情や葛藤を見せており、それ位石神の存在は別格なのです。
果たしてそんな石神がいかなる人物なのか、周囲の人との関わりも含めて読み解いていきましょう。
靖子が罪を自供した理由
本作のラストではそれまで頑なに罪を秘匿していた花岡靖子が罪を富樫殺しを自供します。
それまで梃子でも罪を認めなかった彼女が何故そのような自白をしたのでしょうか?
あらすじを追いながら考察していきましょう。
石神に罪を背負わせてしまった
一番の理由はやはり彼女が図らずも石神に罪を背負わせてしまったからではないでしょうか。
靖子はあくまで物の弾みで殺してしまっただけであり、石神の善意に肖りたかったわけではありません。
しかし、そんな彼女の意志とは裏腹に石神は自分に愛を寄せたが故の行動をしてしまったのです。
その事実が何よりも靖子にとって重すぎたのではないでしょうか。
身も蓋もない見方をすれば、石神の善意はありがた迷惑でしかありません。
罪を重ね続ける辛さ
二つ目にそんな石神のストーカーじみた善意に肖ることで罪を重ね続ける辛さがありました。
しかもこれが自分だけならまだしも娘の美里にまで迷惑をかける形になってしまったのです。
そこまでして居られるほどの図太さ・厚顔無恥さは靖子の心にはありません。
彼女はあくまでも娘の美里と慎ましく平和に暮していた普通のシングルマザーです。
普通の精神力しかない彼女にとって罪を重ねる日々から解放されるには自供しかありませんでした。
美里の一言
そして三つ目に娘の美里から靖子は工藤絡みのことでこう言われています。
これから一生、石神さんを気にしながら生きていかなきゃならないの?それじゃあ、富樫が石神さんに替わっただけじゃないの!
引用:容疑者Xの献身/配給会社:東宝
そう、娘の諌言通りどれだけ善意に満ちていても石神は靖子と美里にとって疫病神なのです。
まるで他人の為が人生の全てになってしまうという本末転倒な生き方でしかありません。