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映画『オオカミ少女と黒王子』は雑誌『別冊マーガレット』に掲載されていた八田鮎子原作漫画の実写版です。
2016年に公開され、廣木隆一監督が二階堂ふみと山崎賢人の2人を主演に抜擢しての制作となりました。
鈴木伸之・横浜流星・門脇麦・菜々緒・池田イライザ・玉城ティナと脇を固める俳優・女優も魅力的です。
物語は女子高生・篠原エリカが自身のついた嘘で人気のイケメン王子・佐田恭也とカップルを偽装する展開。
しかし、彼の正体は中身腹黒のドSであり、そのギャップからとんでもない方向に連鎖していきます。
本稿では恭也が神谷の携帯のデータを消した意味をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、序盤で彼氏役を快諾した目的と最後にエリカと共に走り出した理由も併せて掘り下げます。
嘘から出た実
本作の見所は嘘つきのオオカミ少女と二重人格な王子の恋模様ですが、テーマはズバリ「嘘から出た実」です。
最初は単なる装うための偽物の恋が物語を経ていく内に本物の恋へと変質していきます。
一見ラブストーリーの王道と見せかけつつ、実はエリカと恭也が自分らしさと向き合うという構造です。
エリカも恭也も見栄だの人の目だのを気にして本音に蓋をして生きるええかっこしいでした。
そんな彼らがどのようにして変わっていったのか、それを主に恭也の観点から見ていきます。
神谷の携帯のデータを消した意味
本作の終盤、神谷と同じ立ち位置で女遊びをしていた恭也は何故か神谷の携帯のデータを消しました。
下手すれば個人情報保護などで訴えられてもおかしくない恭也のこの行動に何の意味があったのでしょうか?
2人の関係性や立ち位置を踏まえながら考察していきます。
断捨離
一口にまとめてしまえば恭也がここでやったことは人間関係の断捨離です。
彼は神谷の携帯電話のデータを消す前にこう問いかけています。
なくなるかもしれないって思ったら、胸が苦しくなるような奴がその中にあるか?
引用:オオカミ少女と黒王子/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
つまり恭也は神谷に対して「その女の子達は本当にお前にとって大切な人間か?」と言ったのです。
世の中自分にとって本当に大切な人間、それも自分の価値観を揺さぶってくる程の人間は殆どいません。
恭也の場合その本当に大切な人間が見つかったからこそ神谷の人間関係の虚しさに気付いたのでしょう。
だからこそその女の子達のデータを全て消すことで不要な人間関係を手放したのです。
神谷との訣別
そしてそんな女の子達のデータを全て消し去った後、恭也は神谷に向かってこう口にします。
ちょっと前まで俺もお前と同じだった。でも今は違う
引用:オオカミ少女と黒王子/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
ここで恭也は神谷に次のステージへ向かい、変わっていく宣言をしたのです。
それは即ち女遊びという下らない目的でしか繋がれない神谷との訣別ではないでしょうか。
少なくともエリカと真剣に向き合うまでの恭也と神谷は物事を斜に構えて見るという点で同じ穴の狢でした。
しかし、恭也がエリカとの交際の中でどんどん変わっていくのに対し神谷は全く変わろうとしません。
その内面における変化の有無の差がこの訣別に繋がったのだということが窺えます。
自分らしさへの回帰
そして何よりもこのシーン最大の意義は自分らしさへの回帰、即ち本当の自分へ戻ったということです。
恭也は表面上ドSな腹黒王子と表されますが、それは両親の別居が原因で恋愛不信に陥っていたからでした。
スマートで運動も出来て頭も良いのは素のスペックですが、内面の腹黒王子は後天的に作られたものです。