出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B081JL1L6P/?tag=cinema-notes-22
映画『ファースト・マン』は宇宙飛行士ニール・アームストロングを題材にした伝記映画です。
日本では2019年に公開され、デイミアン・チャゼル監督とジョシュ・シンガーの脚本で制作されました。
キャストは主演がライアン・ゴズリング、ニールの妻ジャネットをクレア・フォイが演じています。
アポロ11号の月面着陸という人類初の偉業をニール個人の視点で描いた本作は以下の功績を残しました。
第91回アカデミー賞において音響編集賞、録音賞、美術賞、視覚効果賞の4つにノミネートされ、視覚効果賞を受賞。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ファースト・マン
命がけのNASAのミッションの物語を描いた本作ですが、本稿では随所に映える「ブルー」の意味を考察していきます。
また、娘カレンの死が冒頭に示された理由やニールが月を目指した真意も併せて読み解いていきましょう。
光と影
本作を理解する上でまず押さえておきたいことはデイミアン・チャゼル監督の作風の変化です。
『ラ・ラ・ランド』を作った人とは思えない程作風がライトからダークに逆転しています。
これはどちらが良い悪いとかではなく、恐らく「光」と「影」の関係なのでしょう。
しかし、両者は決して相反する内容ではなく、監督自身の一貫した作風が共通しています。
それは「過去の作品群に対する今日の視点での冷静な批評」というスタンスです。
『ラ・ラ・ランド』では過去のミュージカル映画への冷静な批評を作品の中で果たしました。
本作では『ライトスタッフ』『アポロ13』『ドリーム』に対する冷静な批評という形です。
その批評を通して作品全体でどんなメッセージを伝えてくれるのかを見ていきます。
随所に映える「ブルー」の意味
本作がアカデミー賞で視覚効果賞を受賞した理由に随所で見受けられる「ブルー」があります。
これは脚本や台詞などでも触れられていますし、映像演出としても「ブルー」が目立つのです。
まずは本作全体の特徴である「ブルー」の意味を考察していきましょう。
地球の「青」
まず最初に挙げられる「ブルー」の意味は単純に地球の「青」です。
これはもう本作がアポロ11号への月面着陸を題材にした時点で誰もが想像しうる「ブルー」でしょう。
「地球は青かった」という名言があるように、地球の瑞々しく輝く「青」が目立ちます。
何故なのかというと地球の7割以上が海水で覆われているからではないでしょうか。
これは物語的な意味とはやや違う純粋な視覚的効果としての「ブルー」であると推測されます。
ニールの心情
2つ目に表現されているのは主人公ニール・アームストロングの心情ではないでしょうか。
それは本作全体を通して描かれる彼自身の性格のことを裏表含めてのことです。
たとえば表の性格としては彼は家族よりも仕事を優先し、感情を表に出さないクールな人に見えます。
妻ジャネットは彼のそうした部分を忌み嫌い反発している描写があるのでまずこれが1つ目です。
しかし、もう1つにはそんな表面上の冷淡さの裏に隠されている悲しみとしての「青」があります。
冒頭で示されているように、ニールは娘カレンの死を奥底で嘆きずっと引きずっているのです。
逆にいうと彼の表面上の冷淡さは娘の死の悲しさをかえって物語っていることが窺えます。
青春
そして3つ目に「青春」、即ち「青臭さ」という意味での「ブルー」ではないでしょうか。