思えば本作はエリザベスを含む色んな人たちが大切な人からの裏切りや別れを経験しています。

ずっと続くと思っていたはずの関係性がある日突然強制終了ということが人生にはあるのです。

つまり人間関係とはあって当たり前ではなく常々変化していく有限のものだということでしょう。

世の中素直さや優しさといったプラスの感情や態度だけでは渡っていけません。

時に懐疑的・批判的に見ることも大切であると教えたのではないでしょうか。

切り札は最後まで取っておく

2つ目に切り札は最後まで取っておいて、ここぞという時に切れということではないでしょうか。

レスリーがギャンブラーとして勝ち続けてこられた理由も切り札をしっかり取っておいたからです。

その証拠に大敗と嘘をついたゲームに勝ちを収め、エリザベスにも別れ際で漸く父の形見の話をしました。

本当にここぞという時に出してこそ切り札は初めて有効に機能します。

ここに父のギャンブラーとしての教えが根強く生きていたことが窺えます。

損切り=断捨離

利食いと損切りのテクニック

「断捨離」というテーマと繋げた場合この台詞は損切りの重要性を説いてくれています。

損切りという言葉は投資や投機(ギャンブル・競馬など)でよく耳にする言葉でしょう。

塩漬けになり負債になる前にここぞという場面で思い切って株を手放して次へ向かうこと。

これはギャンブルだけではなく人間関係も含んだあらゆる物事においていえることです。

もし手放せずに執着し続けるとどうなるかはアーニーの死が身を以て示しています。

断捨離とは即ち損切りであるということが何よりの真意だったのではないでしょうか。

人生はなるようにしかならない

あかるい水になるように

本作の最終的なメッセージは詰まるところ「人生はなるようにしかならない」ではないでしょうか。

失恋や上手く行かない出来事を経験したとき、人はどうしてもその原因が自分にあると思いがちです。

エリザベスも最初は失恋した原因が自分にあると思い込み、だから1年の傷心旅行へと出ました。

しかし、旅を通して彼女はそんなものが単なる思い込みや条件付けでしかなかったことに気付くのです。

でもこれは旅に出たからこそ気付けたことであり、ニューヨークに居たままでは分からなかったでしょう。

その意味ではこの1年の傷心旅行はエリザベスにもジェレミーにも必要な期間だったといえます。

現代人こそ見るべき映画

男は女のどこを見るべきか (ちくま新書)

本作は何よりも悩み傷つきストレスを抱える現代人こそ見るべき映画ではないでしょうか。

確かにテーマもシンプルですし、描写もありがちで凡庸に見えるかも知れません。

しかし、それは裏を返せば王道的で奥深いものであるということです。

表面上のパッケージに惑わされず奥にある文芸を見ていくと断捨離の大切さが隠されています。

そこに気付いた時、本作はただのロマンス映画からまた違った見え方をしてくるでしょう。

どこが良い悪いではなく単純な良さが作品全体に存在している、それが本作の名作たる所以です。

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