ここでは彼女がどのような心持ちで父の愛情に気付いたのかを見ていきましょう。

大火傷を否定しなかった

まず最初の愛情は彼女が幼少期に負った大火傷の傷跡を否定せず誇りとして肯定したことです。

そう、レックスは散々酷い仕打ちをしながらも娘の自尊心を叩き折ることはしませんでした。

その一線の引き方が絶妙で、口だけであったとしてもその言葉がジャネットを強くしたのです。

もしここでレックスが娘の心を傷つける人であったら自己肯定感は低いままだったでしょう。

ジャネットの心の強さ・聡明さの源は幼い頃の父親の愛情で作られていました。

大学の学費を工面してくれた

2つ目に大学時代奨学金だけでは学費が賄えないジャネットにギャンブルで工面してくれたことです。

しかも毛皮のコートをわざわざ大学寮まで持ってきてくれるという男前な一面を見せます。

そう、どれだけ普段格好悪くてだらしなくてもここぞという時にしっかり娘を支えているのです。

決していい父親とはいえませんが、完全に悪い父だったわけでもないのはこの辺に理由があります。

コラムニストとしてのキャリアを続けていけるのはこの時の経済面での支えがあったからでした。

悪魔退治に付き添ってくれた

日本奇病列島―一億の心に巣食う悪魔を退治する (1973年) (21世紀ブックス)

3つ目に8歳の時ジョシュア・ツリーを怖がっていたジャネットに短剣を渡して勇気づけたことです。

ここで父レックスは怪物とは人を脅すだけでしっかり睨み返せばいいのだと教えます。

これもまたジャネットの物怖じしない性格の源を作り上げてくれたのではないでしょうか。

しょうもないこけおどしのツリーだったとしても、子供にとって怖いものに変わりはありません。

そこから逃げずきちんと向き合ってくれたこともまた愛情として彼女の心に響いています。

だからこそ最後に父親似で良かったと万感の思いで締めくくるに至ったのでしょう。

レックスは毒親ではない

狂った家族-毒親と天真爛漫のいらない子

こうして見ていくと、レックスは決して毒親ではないことが分かります。

毒親とは子供の全てに口や手を出し、自分の支配下に置こうとする親です。

ジャネットとレックスはこの逆で散々酷い仕打ちこそ受けたものの過干渉ではありません。

寧ろ娘に厳しく自立心を育てるよう促し、ここぞという時に援助や愛情を惜しみませんでした。

人間としては破綻していながらも父親として娘を一人前に育て上げる役目は果たしています。

だからこそ死に際に和解することが出来たのではないでしょうか。

清濁併せ呑む

書道色紙/名言『清濁併せ呑む』/薄茶額付/受注後直筆(千言堂)

本作は決して家族の絆を肯定もしなければ否定もしておらず、現実として描いています。

家族の絆というと美しく思えますが、全部が全部良いことばかりではないはずです。

嫌いなこと、辛かった思い出や苦しかったことなどもあるでしょう。

正に清濁併せ呑むように過ごしていき、最後は静かにゆっくりと離れていくのが家族です。

ジャネットの家庭はやや特殊だとしても、どの家庭でも大なり小なりこの問題を孕んでいます。