「ふらついてもいい、曲がってもいい、自分の足ならば」という内容は、総じて人生という道にも該当。
自分で未来を決められない紫に対し、譲二はこの言葉を投げかけたのでしょう。
そして、この台詞は本作の中で多くの若者にも向けられた台詞だとも受け取れます。
進路という名の岐路に立たされた若者たちはみな、自分の道に不安を感じるもの。
そういった未来に不安を感じる人たち全てに、自分の道に自信をもって歩けと伝えたかったのではないでしょうか。
譲二なりの愛の告白
自分の足で歩いてこい、俺がここで待ってるから。
引用:パラダイス・キス/配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画
譲二の最後のセリフは、1人で舞台に立つ紫の心の支えになります。
1人で歩く道でも心は1人ではない。その事実があるだけで人は強くなれるものです。
さらに、薬指に指輪をはめた行動からみても、彼のこの台詞は紫への愛を伝える意味も込められていたのでしょう。
原作とは違うハッピーエンド
映画『パラダイス・キス』では、原作に沿ったストーリーながらも異なる終わり方を迎えます。
原作では最終的な紫の恋人に徳森が収まるのに対し、映画では徳森を振った数年後に譲二と再会。
お互いの成功と愛情を確認するハッピーエンドを迎えます。
原作との違いはあるものの、夢を現実にするというテーマをスマートにまとめた終わり方を迎えました。
夢に対する勇気を貰えるスタイリッシュ映画
向井理演じる譲二のキャラクターは、かなりオリジナリティが高いキャラクターとして登場します。
原作のキャラクター性が高い紫に対して、彼女を励ましサポートする譲二の姿は原作ファンからしたらかなり違うと感じる部分もあったでしょう。
しかし、映画の中の譲二や紫の姿は多くの人に、夢に向かって進む前向きな姿勢を伝えてくれました。
進路や就職という未来に不安を感じる人にも勇気をくれる作品となっていたことでしょう。
細部までこだわりを感じるバックグラウンド
映画の見どころは何もストーリーだけではありません。
原作ありきで作られた映画は、アトリエから譲二の家までこだわりのお洒落度をそのまま再現。
アトリエの中には原作コミックスでも登場するアイテムがさりげなく置いてあるなど、矢沢あいワールドの魅力を残しています。
役者によって新たな魅力が生み出されたキャラクターと共に、小物探しなどの面白さがあるのがポイント。
繰り返し観るほど映画独自の楽しみを見出せる作品になっています。
新たなシンデレラストーリーの形
素敵な男性に見初められてハッピーエンドになるシンデレラストーリーも、受動的では本当の幸せは掴めないのかもしれません。
譲二という天才が彼女を見つけたからこそ紫という花が開花したのでしょう。
今を生きるシンデレラは受け身だけでは「夢(モデル)」という幸せをつかむことはできませんでした。