その噂とは妻・エスターが仮面を被っているという噂で、この時点ではただのゴシップでした。
しかしこれが意外と大事で、いわゆる「嘘から出た実」だったのではないでしょうか。
人間言葉の力というのは思っている以上に効果が強く、そこには”言霊“が宿ります。
だから、孤児たちにとっては嘘・冗談のつもりで発した言葉が実現することもあるのです。
ましてやそれが人形に関することとなれば冗談では済まされません。
顔のアザを隠すため
1番の理由は人形に取り憑いた悪魔につけられた顔の左半分のアザを見られたくないからです。
人間は自分の醜さを覆い隠す為に仮面をつけるということはよくあります。
本作ではエスターがその役割を担っていたのではないでしょうか。
手術でもしない限りそのアザを元に戻すことは不可能であり、エスターはそれがショックでした。
だからこそ人に会うときに左側だけに仮面を被ったのです。
精神的ショック
そして3つ目に娘の霊だと信じていた人形の霊がまさかの悪魔だったという精神的ショックです。
サミュエル夫妻の行動原理・動機となっていたのは娘を喪失したことから来るものでした。
その死んだ娘のトラウマから心を回復させるためという名目でサミュエル夫妻は動いていたのです。
ある意味では悪魔との出会いによってその精神的ショックをより強烈に揺さぶられた形でしょう。
寝たきりな上に顔にまで傷つけられるという妻の生態が本作の凄惨さをより引き立たせています。
悪魔を呼び寄せるのは人間
考察を重ねていくと、悪魔を呼び寄せるのは人間であるということが見えてきます。
サミュエル夫妻が持っていた悪魔の魂が宿った人形は確かに脅威かもしれません。
しかし、それを引き寄せたのは娘の死をいつまでも引きずったサミュエル夫妻の負の感情です。
映画なので表現が誇張気味ですが、やはり引き寄せの法則はあるのではないでしょうか。
笑う門には福来たるとよくいいますが、逆にいうと笑わない門には悪が寄ってきます。
人形は媒体に過ぎないということが本作が伝えたかったことではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作は映像の演出や物語の流れを見ると確かに荒唐無稽な怪奇現象の連続に見えます。
しかし、実はその裏にあるのは人間の感情であり、それが悪魔を引き寄せるのです。
アナベル人形はデフォルメしてあることもあって確かに見た目は怖いでしょう。
人形はあくまで人形でしかなく、余計な感情を差し挟まなければいいのです。
ホラーとは突き詰めると人間の恐怖が生み出すものであるという原則に立ち返った一作でしょう。