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映画『クリミナル・タウン』はサム・マンソンの原作小説を2017年に実写映画化した作品です。
監督はサーシャ・ガヴァシ、主演はアンセル・エルゴートとクロエ・グレース・モレッツを配しています。
ワシントンD.C.を舞台にして起こる主人公アディソンの親友ケヴィンが殺された事件が物語の始まりです。
しかし、本作のサスペンスはアディソンとフィービーの恋物語に添えられたものだといえるでしょう。
本稿ではアディソンが事件の犯人探しを始めた理由をネタバレ込みで考察していきます。
また、ケヴィンの部屋にあった真実とDが犯人の住所を教えた目的も併せて読み解きましょう。
生と死
本作は表面だけを見るとやや分かりにくい構成の作品かもしれません。
フィービーとの恋愛と親友ケヴィンの殺人事件、母の死…いずれも単独で繋がりのない要素です。
しかし、「生と死」の概念を用いると点在する要素が1点に集約されることが分かります。
本作で描いているのは思春期に経験する危険なゲームを通したアディソンの成長物語です。
アディソンの中には恋人フィービーという「光=生」と、母及び親友という「影=死」があります。
脆さ・危うさを抱えながら死に接近するゲームへ赴く彼の運命は果たしてどうなるのでしょうか?
青春と犯罪という異色の組み合わせがどんな物語を紡ぐのかじっくり見ていきます。
犯人探しを始めた理由
アディソンはフィービーとの恋愛、そして親友で優等生のケヴィンと最高の学生生活を送っていました。
それがある日突然ケヴィンが銃殺され、何かに取り憑かれたように犯人探しを始めます。
それまで温厚で優しかったアディソンがここまでする理由を考察していきましょう。
親友の弔合戦
最初に挙げられる理由はやはり親友の弔合戦という名の仇討ちではないでしょうか。
ずっと仲良くしていた親友の命が突然奪われれば誰でも怒るでしょう。
しかし、アディソンの場合はちょっと狂気じみていて異様な程執着心が強いです。
復讐に近いニュアンスが強く感じられ、周囲に反対されてもとことんまでやりきります。
学校から停学処分を食らい、しまいには恋人フィービーにまで呆れられるほどです。
果たしてこれ程執着する理由は何なのでしょうか?
母の病死
2つ目に母の病死というトラウマをまだ乗り越えていないことが挙げられます。
そう、アディソンは表面に出さないだけでまだ母の死から自分を解放出来ていないのです。
ずっと心の底に沈めて忘れていたトラウマが親友の死という形で蘇ったのでしょう。
逆にいうとアディソンは「死」というものを過剰なまでに恐れる傾向があります。
恋人フィービーを殊更に慈しむのも死を恐れていることの裏返しかも知れません。
犯人探しならぬ自分探し
後半になるにつれて、アディソンの行動や顔つきはどんどん大人びていきます。
即ち犯人探しが目的ではなく犯人探しを通して自分探しをしているのではないでしょうか。