矢代とヒナはそのスタートラインにすら立てていません。
影でひっそりと生きる
どんな生き方をするにしても、影でひっそりと生きることになるのは間違いないでしょう。
事業に失敗し搾取されてきた男とソープ嬢として体を売るしかなかった女…正にアンダーグラウンドです。
ここまで闇という闇を見た2人がもう1度日の目を見るというのは難しいのではないでしょうか。
逆にいえば、世間一般に溶け込んで生きることが出来ないからこそ影で生きることになるのです。
ここで誤解してはいけないのは影で生きることが決して悪いわけではないということです。
何も表舞台に立って活躍するだけが人生の生き方ではなく、影には影なりの役目があります。
その生き方を矢代とヒナは模索していくことになるのではないかと推測されます。
ヤクザに血の色が見えたわけ
ラストシーンで疑問を呼ぶのはどうしてヤクザに血の色が見えたのか?ということです。
ヤクザは生まれつき白と黒以外が認識出来ない色盲でしたから赤は見えません。
それが何故ラストで認識出来たのかを考察していきましょう。
P型色覚
まず色盲持ちの人は赤と黒の区別がつきにくいといわれています。
ヤクザは冷静さを欠き赤と黒の区別がつかなかったのではないでしょうか。
即ち本当に見えたのではなく脳が赤を見たと錯覚したということです。
ここからいえるのはヤクザがP型色覚だったのではないかという可能性です。
だから赤というよりは赤に近い茶色に見えていたのかも知れません。
白と黒しか見えくても色にはグラデーションがありますから、全てが同じ色ではありません。
麻薬の幻覚作用
2つ目に麻薬の幻覚作用としてこうなったのではないかという可能性です。
言及はされていませんが、やくざであれば麻薬に手を出していてもおかしくはないでしょう。
この場合幻覚作用として普段と違う色が認識出来ても不思議ではありません。
逆にいうとヤクザには見えない筈のものが見えていたことになります。
冷静さを欠いた状態で2人を相手する訳にはいかなかったから引き下がったのです。
運命の赤い糸
3つ目に矢代とヒナの赤い血は運命の赤い糸のメタファーではないでしょうか。
これはもう現実を超えたファンタジーとして表現されている部分です。
とはいえその赤い糸は決して綺麗な赤ではなく黒い濁りが見られます。
これは矢代とヒナの恋がドロドロに濁ったものであることを示しているのでしょう。
その汚さ・醜さに驚愕し、見てはいけないものを見た感覚に陥ったのです。
だからこそ「どうしようもない」と思わず口にしたのではないでしょうか。
忙しいと言った真意
ラストでヒナは矢代をヤクザから救う為に「忙しい」と言いました。
ヤクザは意味が理解出来ずヒナに暴力を振るいますが、何故彼女はそんな台詞を口にしたのでしょうか?