ここではその真意を考察していきます。
韓国料理屋店長の受け売り
最初に挙げられるのはヒナが韓国料理屋店長の受け売りでこの台詞を口にしたことです。
店長はヒナに対して次のように言いました。
早く忘れな、私たちは色々忙しすぎるから
引用:どうしようもない恋の唄/配給会社:クロックワークス
これは自分たちのことで手一杯だから矢代に構っている余裕がないという意味に過ぎません。
ところがヒナはこれをヤクザを追い払うための口実に使えると勘違いしてしまったのです。
ヒナは基本純真無垢で疑うことを知らないから何でも真に受けてしまうのでしょう。
そんな彼女の天然ぶりがここでヤクザ相手に炸裂したと見られます。
自分たちの人生に必死
2つ目に矢代とヒナが自分たちの人生に必死であることを意味したのではないでしょうか。
ヤクザになんか構ってられない位お互いのことしか見えていないのです。
それはある意味とても危険な状態であり、今にも崩れかねません。
そんな危うい所で生きている矢代とヒナのギリギリの人生を表現しているのです。
だからこそヒナの中で「忙しい」という言葉が出てきたのだと推測されます。
次のビジネスを考えている
そして3つ目に矢代とヒナがペットフードに代わる次のビジネスを考えていることを意味します。
それというのも、失意のどん底にいた矢代に対しヒナはこう宣言しました。
必ず向こうの世界に戻れるようにする
引用:どうしようもない恋の唄/配給会社:クロックワークス
そう、ヒナはもう既に次のステージに行くことを夢見ているのです。
前述したように、1度は闇という闇を見た2人ですから表に戻ることは出来ないかも知れません。
でも、どん底まで見たからこそ何も失うものはなく這い上がるだけなのです。
そこへ向かっていく気持ちの前向きさを「忙しい」という言葉で表現したのではないでしょうか。
正論が通用しない世界
矢代とヒナはお互いに惹かれ合いながらも、数々の理不尽や裏切り・不義理を経験しました。
それは2人が単なる風俗嬢とお客様という関係を超えたから生じた関係なのでしょうか?
恐らくそれは違っていて、2人は正論が通用しない世界に生きているということです。
何が正しくて何が間違いかすらも分からない世界で泥にまみれながら自分の道を探す生き方。
だから単なるダメ人間同士の傷の舐め合いを描いた底の浅いストーリーではないのです。
そんな汚い世界の中にも何かしら意味があり、そこから分かることも沢山あります。
綺麗事や正論が一切通用しない世界で、どのような身の処し方をすればいいのか?
矢代とヒナの生き方は単なる恋愛という域を超えてそこまで考えさせてくれるものです。
どんな職業にも人生にも意味がある
本作は扱っている題材がマイノリティかつアンダーグラウンドである為忌避されるかもしれません。
矢代とヒナを中心とした負け組の生き方を白い目で見る方も少なからずいるでしょう。
しかし、どんな職業にも人生にも無駄なものはなく何かしらの意味があって存在しています。
ましてや負け組を生んでしまう社会全体のシステムこそが1番の問題なのです。
社会全体が不安定な時代に誰もがこの2人のようになってしまう可能性があります。
果たして矢代とヒナを愚かだと断じて爪弾きに出来る人がどれだけいるでしょうか?
誰もがなり得るかも知れない矢代とヒナについて凄く深く考えさせられる作品です。