出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07KPBHFS8/?tag=cinema-notes-22
イーサン・ホーク演じるブルース・ケナー刑事が、悪魔崇拝との奇妙な関わりの中、事件を解決するサスペンス映画『リグレッション』。
エマ・ワトソン演じる、虐待された少女アンジェラ・グレイのラストの大告発には、驚かされました。
本作の中での大きなテーマとして「悪魔崇拝者と教団」がありますが、結局悪魔崇拝の真相とはどんなものだったのでしょう。
そして事件の大きな中心人物であったアンジェラは、何を思って嘘をつき続けたのかが分かりかねます。
しかも同じグレイ家で、アンジェラの父ジョンも、自分は虐待していないのになぜ有罪であることを望むのか。
実は映画内で出てくる、無言電話も悪魔崇拝の真相やアンジェラに関わる問題でした。今回はこれらのことについて、考察していきます。
集団ヒステリー
本作の冒頭には、この映画の内容は実話から着想を得て作られている、と紹介されます。
実際に起きた事件が本作の根幹にはありますが、そこにある「集団ヒステリー」こそ悪魔崇拝の真相です。
悪魔崇拝者…の気がする
ざっくり言うと、今回の悪魔崇拝はすべてが人々の集団ヒステリーによる妄想が原因です。
事件のカギを握るジョンにブルースが尋問をかけた後、ブルースはすべてを悟ったかのようにセラピストのケネスの家に行き話します。
記憶ではなく誘発された幻想なのでは?
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
これに対して、ケネスは誰が幻想を見せているのか聞くと、ブルースは「我々」と答えました。
つまり、悪魔崇拝には真相があるわけではなく、人々が勝手に創り上げたものなのです。
それをケネスは「集団ヒステリー」と呼んでいました。
実際に起きた「悪魔的儀式虐待」とは?
映画の中でも頻繁に出てくる「悪魔的儀式虐待」。これをアンジェラも父ジョンに行われたと言われます。
では、冒頭のテロップに出た本物の事件は、どういった事件なのでしょうか。
悪魔崇拝者の儀式に子供たちが供されて性的・肉体的に虐待されたとする主張で、1980年代に全米各地で告発が相次いだ。
しかし、現在は多くはモラル・パニックに過ぎなかったと考えられている。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/悪魔的儀式虐待
モラル・パニックとは、誤解や偏見、誇張された認識が人々を伝わるなかで、さらに拡大解釈され社会的不安を生むことです。
つまり、集団ヒステリーのことを指します。悪魔崇拝が本当に大流行していたのではなく、人々が勝手にそう創り上げているのです。
さらなる恐怖の伝播と便乗する者
この悪魔崇拝者や教団といった社会不安を、本作ではテレビが大々的に取り上げていました。
つまり悪魔崇拝教団は全国に根を広げており、秘密のネットワークを築いています。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/悪魔的儀式虐待
これは、ニュースキャスターが伝える内容の一部。さらには、映画ラストでアンジェラがテレビに向かって、悪魔の存在を公言します。
後述していますが、社会不安が勝手に広がる中、アンジェラはそれを利用して「悲劇の少女」を演じていました。
このようにメディアが情報を拡散し、それに便乗する者がさらに噂を拡散する。これが悪魔崇拝の真相です。
アンジェラとジョンの嘘
本作が難しく感じるのは、事件のキーマンであるアンジェラとジョンが嘘をついているところにあるでしょう。
アンジェラは、自身が性的虐待を受けていたこと、さらには下腹部の逆さ十字を「つけられた」という嘘など、多くの嘘をつきます。
そしてジョンも、「ソドムの者(映画内ではゲイのことを指す)」だから性的虐待の罪を被る。といった嘘をついています。
結局キーマンの二人は、映画ラストになるまですべての行動の背景に悪魔の存在を置いていました。
だからこそブルースは、真相にたどり着くのが遅れます。
しかしその悪魔も、二人が勝手に創り上げた創作物語。都合よく悪魔崇拝を利用していたのです。
映画開始10分弱ですべて語られた!?
2時間程度ある本作『リグレッション』のキーパーソン、アンジェラの目的は、実は開始10分弱ですべて語られています。
真相はブルースの同僚でジョンの古くからの友人である、ジョージが語っていました。