映画が佳境に入るころ、ブルースの家に二人の不審者が侵入しており、その一人はまさに同僚のジョージでした。
ジョージはアンジェラへの性的暴行の疑いで留置所に入れられていましたが、証拠が出てこないために釈放されていたのです。
そのジョージが、観念してジョージにしか知らない情報を話せとブルースに迫られます。
車のなかですべて話した。だろ?
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
このブルースとジョージが車に一緒に乗り込んでいるのは、最初にジョンの母親であるローズの家に聞き込みをしたときだけです。
それは、映画が始まって10分弱のところでした。ここに、アンジェラの目的が語られています。
その時はジョンをかばっているように見えた…
問題の車内のシーン。ジョージはブルースにこう語っています。
アンジェラはあの家から逃げたかったんだ
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
アンジェラは、ジョンのいるグレイ家から逃げたかったから、今回のような大掛かりな嘘をつき、父親を刑務所送りにしたのです。
このセリフの直後、ブルースは「それはないだろ」という風に、17歳の少女がそんなことをするわけないということを語ります。
しかしこの「先入観」こそ、本作の大きなテーマ。先述したように、悪魔崇拝においても人々の思い込みがすべての元凶です。
この車内でのブルースとジョージの会話は、この映画のすべてが詰まっていたのでした。
アンジェラが家から出たい理由
そうなると、今度はアンジェラがなぜ家から出たいのか、ということが気になります。
これにはジョンの「酒飲み」が原因にありました。
酒飲みの父と母親の死
警察の記録にも残っているように、ジョンは酒がやめられないでいました。
俺は長年、酒を飲み、破滅的な生活を送ってた。家族を思いやらず妻は…
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
これは服役中のジョンにブルースが会いに行った、ラストの場面でのジョンの発言。
作中にも何度かジョンのアルコール依存は触れられており、アンジェラはこの父親がいる家から逃げたかったのです。
さらに、そのせいで妻も自殺をしてしまっていました。
アンジェラは、父親が家庭を壊し、さらには母親の命まで奪ったことを憎んでおり、だからこそ父親を刑務所送りにしようとしたのです。
その際に利用されたのが、悪魔的儀式虐待だったのでした。
ジョージとの駆け落ちに失敗
母が自殺し、父親が刑務所に入った後の家に、アンジェラはいつまでもいるつもりはありません。
「家族は全員負け犬で、母親はそのせいで自殺した」と。寝物語でジョージにそう語ったんだろ。彼に駆け落ちを断られ
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
ブルースがアンジェラの目的を暴き出す場面、ジョージが語った言葉を借りながらブルースはこう説明します。
つまりジョージとアンジェラは、性的な関係を持っており、アンジェラは本気で恋して駆け落ちしようと思っていたのです。
一方ジョージはそうする訳にもいかず、駆け落ちを断ったので、アンジェラは人生を変える賭けにました。
それが、家から抜け出すこととだったのです。
ブルースを取り込む
作中ブルースとアンジェラは一度だけ、母親の墓標の前でキスをしました。
少なからずブルースの側には、被害者アンジェラに対する同情の気持ちや欲望はあったでしょう。
一方アンジェラは、父親に虐待された悲劇の娘だとブルースに信じさせための行動でした。
例の傷痕は自傷の可能性がある。トラウマを受けた者が、自分を信じさせるため演出することも
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
アンジェラの下腹部の傷を初めて見たのは、映画中ブルースだけでした。
つまりブルースをうまく使おうとしていたのです。この事件の捜査を主に担当しているのはブルース。
アンジェラはそう判断して、ブルースを味方につけ、家から逃げ出すために後押しさせたのです。
ブルースを悪魔崇拝という妄想に引きずり込む
アンジェラは家から逃げる口実として、悪魔的儀式虐待を受けたことを利用します。
その「悪魔」を信じさせるために、ブルースに対して行ったのが無言電話でした。