彼女が母親になりたいと願うのは、不良として生きた時間が通過点だったことを示しています。
映画の冒頭に過去を回想するかのようなセリフが入っていますが、不良として生きたのはほんの一瞬の時間だったのでしょう。
彼らの人生の通過点の一つです。
和希が母親になる為に必要な時間だったのでしょう。
劇中で宏子とトオルに子供が出来たことが明かされていますが、彼らもまた暴走族という時間を通過した存在です。
和希の夢に反映されるダメな大人たち
『ホットロード』は10代の少年少女の目線で描かれており、登場する大人たちは、ダメな大人として映っています。
愛を与えられない親
親同士が愛し合っていれば、子供は自然に自分の大切さを知るのかもしれない
あの子にはそれを教えてやることが出来なかった
引用:ホットロード/配給会社:松竹
木村佳乃演じる和希の母親は、子供に愛を与えることが出来ないダメな母親です。
子供がいくら手を伸ばしても、その手を握ろうとはしませんでした。
和希にとっては反面教師だったのでしょう、きっと和希はこれから愛であふれた家庭を築いていくのではないでしょうか。
和希が赤ちゃんを望むのは、家族という暖かな空間を作りたかったからです。
自己中心的な大人
原作には自己中心的な大人がしっかりと描かれています。
映画の中でも、大人たちは自分たちのことばかりを考え子供たちの気持ちに寄りそうことはありませんでした。
彼らが命の綱渡りをするような生き方を選んでいるのは、人よりも繊細だからなのでしょう。
本作でも大人たちの姿に失望している心が、上手く描かれています。
幻の映画化
本作は何度も映画化の話が出ていましたが、原作者の紡木たくは頑として受け入れませんでした。
彼が「Hwa eiganiha Sinai」というメッセージを漫画の中に書き記しているのは有名な話です。
彼は、読者のもつイメージを大切にしたかったのでしょう。
それ故に今回の映画化はファンを大いに驚かせるものだったのです。
第38回日本アカデミー賞
新人俳優賞 – 能年玲奈、登坂広臣引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ホットロード
本作はアカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞し、原作ファンからも高く評価されました。
またエンディングでは尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」が使用されています。
彼もまたホットロードに影響を受けた一人といわれています。
命の大切さを訴える名作
『ホットロード』は、愛や命がいかに大切かを訴える映画といえるでしょう。
いつ死んでもおかしくない暴走族の世界を描きつつ、死にたくないという主人公を切なく映し出します。
自分の為だけに生きる大人たち、愛する者の為に生きようとする若者たちと双方の生き方が明確に表現されていました。
時代を超えても愛され続ける『ホットロード』は、観るごとに深みの増す映画ではないでしょうか。