しかし彼女もまた、ジョンに直接お礼を言っていません。
それは「寄付が匿名である意味」を知るからこその暗黙の了解だったからです。
ジョンは今でも自分を愛している、匿名の寄付にはジョンの愛が詰まっていたのです。
影ながら支えたい
ジョンはティムと結婚生活を送るサヴァンナに対して、自分が出ていって支援することは出来ないと判断しています。
また彼女もそれを望んではいなかったでしょう。
しかしジョンは今でも彼女を愛しており、彼女もジョンを愛していることを知りました。
一緒にはなれない状況で、それでも彼女に愛を届けたかったのでしょう。
Dear John Letter
本作の原題は「Dear John」ですが、アメリカではお馴染みの「Dear John Letter」のことです。
別れの手紙
一言でいえば女性が送る別れの手紙です。
第二次世界大戦中にアメリカ人によって造られた
引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Dear_John_letter
長期で兵役に出る男性に対して、当時一般的だったジョンという名前を使用して別れを告げていたのだそうです。
原題を知れば、タイトルだけで既に別れを予感するものであることが伺えます。
しかし二人の愛はそう簡単に消えなかった、というどんでん返しが待っている作品といえるでしょう。
映画冒頭、休暇の二人が出会うシーンでアランがジョンに挨拶をしています。
これは後に三人で暮らすことになるという、伏線だったのではないでしょうか。
手紙が主軸になっている
本作は手紙が重要なアイテムになっています。
ジョンが最後に父親に送ったのも手紙でした。
恋愛だけではなく、コインを通して父と息子の親子愛も見事に表現されています。
これは家宝にすべきだ。
売らずに大切に保管し、息子に譲る。
息子から孫に、孫からひ孫に
引用:親愛なる君へ/配給会社:スクリーン・ジェムズ
父から子へ引き継いでいく想いが切なく描かれていたのです。
『親愛なるきみへ』は専門家の評価が低かったにも関わらず、アメリカ国内では大ヒット映画となっています。
兵役という身近でリアルな世界観が共感を生んだのはいうまでもありません。
リアルな恋愛が魅力的
『親愛なるきみへ』に描かれている恋愛は、理想の愛ではありません。
戦地で愛にすがる男と、孤独に負けてDear John Letterを送ってしまう女子大生の物語なのです。
ラッセ・ハルストレム監督は、リアルな愛を観る者に届けてくれました。
もしも自分だったらどう行動しているだろう、そんなことを考えさせてくれる映画ではないでしょうか。