このような失礼な態度をWWEでのし上がることで見返そうと思ったのがきっかけでしょう。
しかし、前述したように現実は決して甘くはなく、ザックはトライアルテストに落ちてしまうのです。
ただ、逆にいうとザックは「自分の為」ではなく「他者の為」にWWEを目指そうとしたことになります。
ここが根本的な間違いであり、スポーツの世界ではまず自分が何をなしたいのかが大事です。
他人のためはあくまでもその後についてくる形でなければ成功しないといわれています。
自身の中に確たる目標・芯のようなものがないザックはプロレスラーとしては落第点でしょう。
ザックが妹を叱咤した理由
紆余曲折を経てサラヤはどんどんWWEの世界へと前のめりに動き出していきます。
その影には家族は勿論のこと何よりも兄ザックの叱咤激励がありました。
ショーの直前、サラヤはザックから叱咤激励の電話を貰い、見事勝利を手にします。
ここではその理由について考察していきましょう。
自信を身につけて欲しい
サラヤに足りなかったのはプロレスラーとしての自信、そして覚悟でした。
前述したように彼女のレスリング人生は常に兄ザックへの憧れありきで形成されています。
だから兄への憧れは原点であると同時に彼女を邪魔する卑屈な謙遜にもなってしまうのです。
兄はどれだけサラヤが成長してもどこかで負い目・引け目を感じていることを分かっていました。
だからこそ、その卑屈な謙遜を振り払って自分の道を進んで欲しかったのではないでしょうか。
「お前はナイトだ」という言葉にはそんな兄の厳しくも優しい思いが詰まっています。
夢を託す
2つ目にザックは自身がWWEのスターとして戦うという成し得なかった夢を妹に託したのでしょう。
男前に叱咤するザックも1人の人間ですから、トライアルテスト不合格でヤケ酒もしました。
しかし、そんな彼だからこそ自分よりもサラヤの方が主役向きだと分かったのではないでしょうか。
実力だけでいえばサラヤよりもザックの方が間違いなく強く、実際に脚本無視して倒しています。
しかし、ザックには実力はあってもサラヤのような華・スター性が備わっていません。
実力以前にこうした天性の華は後天的な努力ではどうにもならないのです。
ザックこそまたサラヤのそうした所に憧れを抱いていたことが窺えます。
恩返し
3つ目にプロの道を断念せざるを得なくなったザックを励ましてくれたサラヤへの恩返しです。
飲み屋で喧嘩になった時、改めてサラヤとザックが腹を割って本音を話し合う場面があります。
ここでサラヤはプロじゃなくともレスリングに関わって生きることは出来ると兄を諭しました。
ザックもその言葉で改めて子供達にプロレスを教える教育者としての立ち位置に戻ることが出来たのです。
その恩返しとして今度は自分が妹サラヤを励まして上のステージに行かせようと思ったのでしょう。
途中でどれだけ躓きがあっても決して変わらない絆が本作最大の見所です。
彼らが戦うもの
考察を重ねていくと、サラヤとザックを中心にこの家族が戦うものが見えてきます。
それはリングの上の敵という目の前のことではないもっと奥深くにある抽象的かつ本質的なものです。