彼が最後まで辛い気持ちを隠し続けることができたのは日々人への思いです。
何としても早く宇宙飛行士になって日々人を助けるために月に行かなくてはいけないと思っている六太。
六太が告白しなかったのは『宇宙飛行士になりたい』ではなく『ならなくてはいけない』という強い決意です。
もう一人のグリーンカードは誰に出たのか
六太のAチームと同様にBチームの模型も破壊されました。
六太と同じ指令を受けた人間がもう一人いるということです。
六太を必死で止めた真壁ケンジかもしれないと思わせる演出でしたが本当のところは判らないままでした。
映画でのグリーンカードは2枚です。
A班の中でゆるいリーダーシップを発揮していた六太に出されたことを考えるとB班でもリーダー格の人物だと予想できます。
B班のリーダーは真壁のように見えますが溝口が抵抗していました。
その二人を見守りつつ軌道修正する福田こそが隠れたリーダーシップを発揮していたのかもしれません。
本編の中では明かされませんでしたがおそらく福田ではないでしょうか。
日々人が危険でもなぜテストを続けたのか
NASAと連携をとりつつ月面で行方不明になったクルーを探すJAXAの星加は日々人の危険を受験中の六太に伝えました。
原作の漫画では日々人の性格を一番わかっている六太の予測によって救出されましたが映画では違います。
南波兄弟の強い絆を直接行動で表現しなかった映画版の意図を深読みしてみましょう。
六太が決断したときの心境を深読み
小学生の頃UFOの話からいじめを受けた六太。あの日から彼は夢から逃げ続けました。
逃げたくないのに逃げることをいつも選ぶ自分を嫌悪している六太は自己矛盾を抱えています。
しかし日々人が死にそうだという事実から逃げるわけにはいきません。
彼は星加から現状を聞かされた時一瞬迷います。しかしその時弟との約束を守るのは今しかないと悟りました。
弟を助けるのは兄である自分の役目であり、そのためには宇宙飛行士になるしかないと思ったのです。
試験会場から出てNASAに行き、地上からいくら祈っても何の解決にもなりません。
それなら0.1%でも可能性を追う方が良いはずです。今の自分にできる事は他に何も無いと六太は考えたのでしょう。
日々人はなぜ六太を待っているのか
日本人初のムーンウォーカーに選ばれた日々人はずっと六太を待っていました。
六太がクビになったことを最も喜んだのは日々人です。
彼は搭乗前の記者会見でこう言っています。
「僕より先に月に立つはずだった人がこの場にいないことがとても残念です。」
引用:宇宙兄弟/配給会社:東宝
これは六太のことです。日々人は六太の背中を追ってずっと走ってきたのでしょう。
六太が走ることを止めても日々人は六太の背中を空想して追っていました。
日々人にとって『月に行くこと』は『むっちゃんと一緒に行く』と同義なのです。
極限状態を乗り越えるために必要なこととは
六太にとっての極限状態とは日々人を心配しながらも試験を続けた時間です。
日々人にとってのそれは月面での事故でしょう。
その全く違うシチュエーションの中、二人は互いを思いました。
六太が極限状態を乗り越えたときの心境
六太の口癖は『俺はドーハの悲劇の日に生まれた男だから』です。
だから悲劇に慣れるというのもおかしいですが、それを理由に自分の感情に蓋をしてきたのでしょう。
感情を表に出さないことと押し殺すことは似て非なるものです。