前者は理論的に実践することですが後者は無理やり押し込めただけだと考えると六太の行動も理解できます。
六太は『見方を変える』ことでこの極限状態を乗り切ろうとしました。
日々人がなぜそんな事故に遭ったのかを追求するよりどうすれば救う可能性が広がるのかを考えたのです。
事故原因を追究することは未来の月面活動の基本設計には役立ちますが、日々人を救うことには直結しません。
六太が試験を継続することが事故の再発防止に役立つことは無いですが、日々人を救う可能性は広がります。
自分の中で1番大切なものを決めるとどんな局面でも軸がずれることは無いのです。
六太は『日々人を救う』という軸を手放さなかったのでしょう。
日々人があきらめなかった理由
日々人は宇宙飛行士になるために様々な困難を乗り越えてきました。
それは全て兄と一緒に月に行くためです。
毎日兄と一緒に夜空を見上げた日々が彼を支えてきたのでしょう。
生きることをあきらめかけていた日々人の脳裏に兄の楽しそうな声が響きふっと笑いましたね。
兄との思い出と共に生きる希望を蘇らせた日々人も六太と同じで『息が止まる最後の瞬間まで何とかしようとする』人間です。
なぜこうなったのかを考えるより、どうすれば助かる可能性が広がるかに集中するべきだと考えたのでしょう。
助からないと六太との約束が果たせません。彼もまた一番大切なことを手放さなかったのです。
兄弟の約束とは
六太と日々人の約束。それは『宇宙飛行士になる』ことです。
2025年に日々人は月へ到着し、六太は宇宙飛行士への階段を上がり始めました。
二人の約束が実現に向かって動き始めた記念すべき年だといえます。
それから6年後に発表された月面活動メンバーに二人の名前がありました。2031年のことです。
ロケットに向かう日々人を六太が追いこして先に歩こうとしました。
それを見て嬉しそうに笑う日々人。
彼はずっとこの瞬間を待っていたのです。
原作との違い
原作の漫画『宇宙兄弟』は2020年現在も連載が継続されています。
原作での日々人はパニック障害を抱えNASAを去り、六太はNASAで仲間と一緒に新しいミッションに挑む展開です。
活躍の場は違っても宇宙という共通の夢を追い続ける南波兄弟の物語はまだまだ終わりそうにありません。
逃げようとした兄を引き戻した弟というのが映画の軸です。
しかし、折れそうになった弟を支えたのは兄という続きのストーリーが原作では描かれます。
壮大なストーリーをコンパクトにまとめつつ作品のテーマ『夢を追い続ける意義』を見事に魅せた映画『宇宙兄弟』。
夢を忘れかけた大人はもちろん、夢を追おうとしている子供たちにも観てほしい日本映画の名作です。