出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07VWH6RPL/?tag=cinema-notes-22
映画『小さな恋のうた』は沖縄の小さな町で起こった高校生のロックバンドを題材にした作品です。
監督は橋本光二郎、主演に佐野勇斗・森永悠希・山田杏奈らを据えて制作されています。
MONGOL800の同タイトルの曲がモチーフであり、その縁で本作に出演したことも話題となりました。
友達や家族、果ては米軍基地の少女まで巻き込んでいく亮多達の姿は正に愉快痛快な青春そのものです。
本稿では父が舞に「ギターを直したい」と言った理由を中心に考察していきましょう。
またラストで慎司の姿が見えた理由や音響を準備した大輝の想いも併せて見ていきます。
“戦う”ことの大切さ
本作は表向き爽やか青春ドラマとしていますが、本質は物凄くシビアな“戦う”ことの大切さを描いています。
舞台となるのは沖縄で、主人公ら高校生達が戦うべき壁として立ちはだかるのが沖縄問題です。
米軍基地問題で生じる未解決の沖縄と米国の根深い歴史の問題やそんな家族の心理に至る諸問題。
本作に出てくる高校生達はロックバンドという活動を通してそうした現実へと立ち向かいます。
見たくない現実をしっかり見据え、時に諍いを起こし傷つき批判されながらも一心不乱に立ち向かうのです。
それは正にロックバンドが本来持つ社会への批判精神の復活といえるのではないでしょうか。
ロックというジャンルの魅力と共に本作が紡ぎ出してみせるメッセージを本題に沿って読み解きます。
ギターを直したいと言った理由
物語後半、学園祭のシーンで亮多たちは教師から大目玉を食らい停学処分となります。
しかもそれだけではなく、舞の父は無許可でギターを破壊してしまうのです。
そんな理解の欠片もない彼が終盤で「ギターを直したい」と言った理由を考察していきましょう。
舞の本音
最初のきっかけと思しき要素は舞が父に向かって放った本音です。
私、大切なことはお父さんじゃなく全部お兄ちゃんに教わったんだから!
引用:小さな恋のうた/配給会社:東映
ここで1番ショックだったのはそれまで反抗されたことのない娘に反抗されたことでした。
舞は基本的に本作における抑え役であり、口数も少なく滅多に自己主張をしません。
しかし、そんな舞だからこそここで出る本音の破壊力に重みがあるのです。
自分よりも死んだ兄・慎司の方が大切だというのは父にとって大きく堪えたでしょう。
いってしまえば舞の父はここで娘の地雷を思わず踏んでしまったことになります。
羨望と嫉妬
舞の父は「我慢するんだ」という言葉に代表されるように厳格な人として描かれています。
しかし、それは先天的ではなく米軍基地問題や慎司の死など後天的な要素が影響しているのです。
だから本当は娘の舞をはじめ自由に行動出来る亮多達への羨望と嫉妬があったのではないでしょうか。
抗議デモにだって本当は参加したいのに、口実をつけて諦めていただけに過ぎません。
だからこそ娘の姿を見て自分の本音と向き合い、直そうと決意したのでしょう。
変化を恐れている
このシーンの前に舞の父は舞に対してこう忠告しています。
一生懸命勉強して内地の大学へ行くんだ。外から見たらよくわかる、この小さな島の様子が。昔から何も変わっていないんだ
引用:小さな恋のうた/配給会社:東映
そう、父も決して頭ごなしに娘のやりたいことを否定しているわけではありません。