確かに周囲からしたらジムの行動・言動は狂気じみたものでしかないのでしょう。
しかし、歴史に名を残す偉人とはその功績とは裏腹にどこか突き抜けた悪人としての顔もあります。
普通の人に出来ないことを出来るからこそジムとオーロラは宇宙船に名を残したのでしょう。
逆にいうと根っからの善人は大胆なリスクある行動は好まないので歴史に名を残せないのです。
運やタイミング、状況的なものなど様々なものが重なってジムとオーロラは英雄となりました。
オーロラが冬眠を拒んだ理由
オーロラはジムの身勝手で冬眠から強制的に起こされ、1度は完全に拒絶し関係が破綻します。
そんなジムから再び冬眠が出来るからどうかと提案された時に、何故か彼女は冬眠を拒むのです。
ここでは冬眠を拒絶した理由について読み解いていきましょう。
償い
ここで描かれているのはジムとオーロラの自分たちなりの「償い」なのです。
ジムはまずオーロラを無断で起こして人生を狂わせてしまったことへの罪悪感がありました。
そしてオーロラもまた自分が拒絶したせいでジムに罪悪感を持たせたことに責任を感じています。
お互いの「償い」の形がぶつかり合った結果、オーロラは一緒に生きていくことになったのです。
逆にいうと、償いの気持ちがなければ2人の愛は生じなかったかもしれません。
喪失への恐怖
2つ目にオーロラのジムに対する愛情は喪失の恐怖が前提としてありました。
宇宙船アヴァロン号を壊滅の危機から救った際、ジムは1度心肺停止状態で死にかけたのです。
助かったのは奇跡としかいいようがなく、この時オーロラは必死の形相でジムを救い出しました。
その経験がオーロラをしてジムともう離れたくない、離したくないと思わせたのでしょう。
強迫観念にも近い愛ですが、その位オーロラの中でジムは大きな存在となっていたのです。
だからこそ何が何でもジムのことを手放したくなかったのではないでしょうか。
伝説は塗り替えるもの
そして3つ目にこの選択をしたことでジムとオーロラは本作におけるアダムとイブになるからです。
ジムもオーロラも本来あるべき「到着まで120年間眠る」というルールを破った大罪人であります。
ここでもし前述したオリジナルのプロット通りに進めれば完全なノアの方舟となる予定でした。
しかし、そこを崩してラストはアダムとイブの伝説を塗り替えて宇宙船の救世主となったのです。
正に「仮面ライダークウガ」の主題歌にあるように、ジムとオーロラは神話を否定しました。
そして自分たちこそが新世界の創造主になったことをこの選択が示したのではないでしょうか。
ジムが育てた木々に込めた思い
こうしてジムはオーロラ共々宇宙船の救世主となり、ジムは木々を沢山植えて育てました。
彼が育てた木々には果たしてどのような思いがこもっているのでしょうか?
世界樹ユグドラシル
まず1つ目にジムが育てた緑の木々は世界樹ユグドラシルのメタファーではないでしょうか。
これはキリスト教のモチーフだけでは読み解くことが出来ないもう1つのレトリックです。
この宇宙船アヴァロン号を1つの世界と見立てると、この樹木は生命の起源・象徴を意味します。