汗水垂らして働くより親から受け継いだ資産を運用した方が儲かるのです。これが格差社会を生み出す最大の要因だとピケティは主張します。
まさか現代がかの18世紀フランスのようであるはずがないという我々の感覚を逆手にとったのです。
ピケティは格差社会という意味では18世紀フランスと現代変わらないというショッキングな現実を突きつけました。
格差社会を作った人々
ピケティが指摘するこの格差社会を作ったのはどのような人たちなのでしょうか。
犯人捜しをして批判することだけにはそれほど意味はありません。
しかし過去に遡って格差社会を生む経済ステムをリードしてきた人たちを見ることは、今後の資本主義社会を考える上で意味があります。
産業革命後の企業家達
資本を持ち富を拡大しようとする者にとって労働者と消費者はどちらも重要です。
産業革命を成し遂げた西欧の企業家達は自国の市民を労働者・消費者として囲い込むだけに止まらず、国家を動かして植民地経営に乗り出しました。
そこでは得られた利益の配分は適切に行われず資本家達に集中することになり、世界的な格差の拡大に拍車を掛けることにつながったのです。
資本を持つ企業家達が得られた利益の多くを独占して社会の格差を拡大する構図は、現代まで続いてきた基本的な形といえます。
経済学者達
さらに格差社会を生んだA級戦犯として忘れてはいけないのは、自由主義に基づく資本主義社会の正当性に理論的な裏付けを与えた幾多の経済学者達です。
多くの経済学者達は最終的には自由な経済活動によって富は適切に配分されるというトリクルダウン理論をリードしました。
ピラミッド型に積み上げられたシャンパングラスの上からシャンパンを注げば、あふれたシャンパンは下にしたたり落ちるというのです。
現在ではこの理論に対する反論も多く見られますが、これらの経済学者達が過去において企業家達の理論的バックボーンとなった事実は否定できません。
レーガンとサッチャー
アメリカ大統領だったロナルド・レーガンとイギリスの首相だったマーガレット・サッチャーはどちらも新自由主義の旗手でした。
前政権の行き過ぎた福祉施策を抜本的に改め、富裕層の減税や経済活動への政府の関与を小さくするいわゆる小さな政府を目指したのです。
この政策は政府の関与によって一時的に格差を是正しようとするそれまでの方向を一変させました。
確かに経済活動そのものはより活性化しましたが、その果実の多くは一部の富める企業家達が獲得し、労働者達への配分は適切に行われませんでした。
これが現代に続く格差社会への大きな流れを作ったのです。
特権階級の存在
人類の歴史の中でいつの時代にも特権階級は存在しました。
彼らの特別な権力の裏付けとなっているのは、時代によってその形は変わりますが基本的には経済力です。
現代の特権階級
現代社会には基本的に身分による階級差はないことになっていますが、現実的に特権を持つ人々は存在します。
経済的環境が学歴に影響し、世代間で格差が固定化する傾向が続いています。さらには多くの富裕層の財産はその子孫達に相続されるのです。