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史上初の偉業を成し遂げた棋士・瀬川晶司の半生を描くドキュメンタリー本を映画化した作品『泣き虫しょったんの奇跡』。
元奨励会員の豊田利晃が監督をしたこともあり、生々しく描かれた将棋棋士の現実は予告編から話題となりました。
特に瀬川の発言や再び将棋を始めた理由などには、様々な意味が隠されているといわれているのです。
今回は、瀬川が再び将棋を始めた理由をはじめ、映画において気になる様々な点を考察していきます。
遊びに没頭した理由は?
奨励会に入会後スランプに陥った瀬川は、奨励会の友人達と競馬やゲームなどの遊びに没頭し将棋とは無縁の生活をしていました。
誰よりも将棋を好きであった瀬川が、どうして一時期は将棋と縁を切っていたのでしょう。
ここでは、瀬川が遊びに没頭していた理由について考察していきます。
現実逃避
奨励会には、満21歳の誕生日までに初段、満26歳までに四段になれないと退会という鉄の掟が存在します。
スランプに陥っていた頃の瀬川は当時24歳であり、四段になれるチャンスは残り4回という状態でした。
しかし何度挑戦しても、瀬川は後一歩の所で四段への昇進を逃しています。
刻々と迫り来る棋士としてのタイムリミットに、瀬川は精神的に追い詰められていたことでしょう。
ここから考えると、競馬やゲームなどの遊びに没頭していた理由は、年齢制限という恐怖からの逃避と考えられます。
しかし競馬やゲームに興じているシーンでは、瀬川の顔は楽しそうではありません。
たとえ現実逃避をしても、年齢制限という現実・対局で負けた自分に対する情けなさは、心に残ったままなのでしょう。
安心感を得るため
また、競馬やゲームなどで現実逃避をしていたのは瀬川だけではありません。
瀬川と同じように、対局で負けが続いて精神的に追い詰められた奨励会員達が瀬川の家に集まっていました。
ここから考えると、瀬川が遊びに没頭した理由は「同じ状況の人と一緒にいる」という安心感を得たいからといえます。
現実逃避しているのは自分だけではないと思い込むことで、自身の精神を安定させようとしたのでしょう。
再び将棋を始めた理由とは?
挫折と現実逃避を乗り越え、再び将棋のプロを目指すべく編入試験に挑戦する瀬川。
一度は自殺も考えたほどの精神状態であった瀬川が、なぜ再び将棋を始められたのでしょう。
瀬川が精神的に追い詰められたのは、奨励会で実感した将棋の在り方にも原因があると考えられるのです。