クレイが真の敵だと知ってからは態度が大きく変わり、共闘するに至ります。

クレイへの怒り

怒り (上) (中公文庫)

第2段階として生まれてくるのは自身を生み出したヘンリーに対する怒りです。

その迷いが特に強く表れているのはラストシーンの前でクレイを説得しにかかる所でした。

ここでジュニアはクレイから「俺のクローンだったら良かった」などと言われてしまいます。

これはジュニアにとって自身の存在意義を完全否定されたも同然だったのではないでしょうか。

さりとて、即座に殺すことが出来る程決して非情な人間でもなかったのです。

この怒りが前述したヘンリーがクレイを射殺するあのラストシーンへ繋がっています。

怒りの消化

ヘンリーがジュニアの怒りを肩代わりしたことでクレイへの怒りは消化されました。

それと同時にここでジュニアはジャクソン・ブローガンという1個人となったのです。

きっと彼の中で生じた怒りは本来の気持ちではなく平和に生きたかったのが本心でしょう。

その気持ちをクローンでもあり父親でもあるヘンリーがきちんと汲み取ってくれました。

だからこそラストは後腐れなくそれぞれの人生を歩むことが出来たのではないでしょうか。

ラストの結末は非常に筋の通った真っ当なハッピーエンドであるといえます。

いずれやって来るAI時代

AI時代の人生戦略 「STEAM」が最強の武器である (SB新書)

本作で示されたジェミニ計画はもう1つ組織論として見ると面白いテーマが見えてきます。

それは何かというといずれやって来る人類総AI化という恐るべき未来です。

本作で示されているクレイのクローンは計画こそ破綻したものの鋭い批評性も兼ね備えていました。

それは組織から優秀な人材が居なくなった時にAIやクローンを作っておけば困らないということです。

初期投資は高いかもしれませんが、長期で見て人件費が浮くしヒューマンエラーも起こりません。

昔から示唆されてきたことが改めてそう遠くない将来に来ることをこの結末は示唆したのではないでしょうか?

だからこそゲームか現実か区別のつかない演出になっているのではないかと推測されます。

まとめ

国語と英語のカリスマ教師が教える AI時代の読む力

いかがでしたでしょうか?

本作はあまり興行成績も芳しくなかったらしく評価もあまり高くなかったと聞きます。

しかし、それだけで切り捨てられるほど無価値な作品かというと決してそうではありません。

現実とゲームが更に一体化した映像演出は架空と現実の境界線の曖昧さとして秀逸な出来映えでした。

また、クローンから様々な社会問題・組織論が生まれてくることを非常に的確に示唆しています。

改めて受け手にこれからどのような時代が来るかを想起させるに相応しい1作ではないでしょうか。

ヘンリーとジュニアの問題は決して他人事ではなく誰にも等しく来るかもしれない問題なのです。