結局甲子園でどうなったのかは絶妙にぼかされており、描かれていません。
そんな彼らは卒業時に決意をするのですが、どんな決意なのでしょうか?
笑って卒業する
まず1つ目に川藤先生の言葉通り、全員で笑って卒業するという決意がありました。
彼らが甲子園で優勝出来たかどうか、その辺りは絶妙にぼかされています。
しかし大事なことはそこではなく、全員が悔いのないように野球に打ち込むことです。
真剣に取り組み、常に目標に向かって邁進する姿勢があったから全員笑って卒業できました。
まずこの決意はしっかり果たされ、悔いを残すことなく安仁屋達は次へ向かえます。
マネージャーへの感謝
2つ目に野球部を影から支えたマネージャー・八木への感謝がありました。
安仁屋が代表して八木にユニフォームをプレゼントするという粋なシーンです。
ずっとレギュラーだと思ってたからよ
引用:ROOKIES -卒業-/配給会社:東宝
マネージャーを決して除け者扱いせず、きちんとメンバーの1人として感謝していました。
決してレギュラーだけではないベンチやその他多くの仲間達も八木への労いを忘れません。
こうした末端のキャラクターにまで目配り・心配りが届いている所が本作の秀逸な所です。
川藤先生への感謝
3つ目にかつて荒れていた二コガク野球部を立て直した功労者・川藤先生への感謝です。
彼が辛い時も苦しい時も、嬉しい時も楽しい時も全部を共有してくれました。
決して楽ではない甲子園までの棘の道を突き進んで来られたのもひとえに川藤先生あってこそ。
最後の感謝の言葉、そして胴上げは彼の苦労が報われた瞬間ではないでしょうか。
野球部というとどうしても選手の活躍が目立ちますが、何よりも監督・コーチの存在が大事です。
ここで得たことはその後どんな形であれ二コガク野球部の心の中に生きることでしょう。
青春とは人生である
本作が集大成の作品として伝えてくれることは「青春とは人生である」ではないでしょうか。
甲子園とはいわゆる人生において受験勉強と並ぶ人生の転機となる大きな出来事です。
川藤先生が何よりも人生の最も輝く青春期の二コガク野球部に伝えたかったのはそれでしょう。
勝ち負けだけではない、真剣に1つのことを諦めずやり抜くという経験とそこから得られる自信。
単なるスポーツ漫画に終始しない御子柴達の「人生」が本シリーズには凝縮されています。
人間力を問う物語
シリーズの集大成として作られた本作を最後まで見終えると本質が何であったかが見えてきます。
それは「人間力」を問う物語であり、真剣に向き合って野球に生きるドラマこそが魅力です。
本作を野球漫画として見た場合完成度の高さや面白さで勝っている作品はあるでしょう。
「巨人の星」をはじめ日本では沢山の野球漫画の名作が作られてきたのですから。
何故本作が大きな人気を誇るのかというと1人1人の人間力を問うているからです。
赤星が真のエースに成長したように、野球を通して全員が魅力的な人間へ成長していきます。
そういう経験を10代後半に経験するというのは何にも尊い貴重な経験ではないでしょうか。
その1つが夏の甲子園であり、本作はその魅力をギャグや爽やかさと共に伝えてくれた傑作です。