このラストシーンは夕美というスパイスとともに、これから楽しさがバージョンアップした間宮兄弟の日常がくることを予感させます。
同時にこのラストからは間宮兄弟たちから生きることの本質的な意味をつかみ取る夕美の可能性も見て取れるのではないでしょうか。
沙織が徹信のMDを断ったのは
徹信にとって女性に自分が編集したMDを渡すことは愛の告白なのです。
自分が好きなものを相手と共有したいという思いです。沙織にはそのいじらしい徹信の行為を鼻にも掛けない残酷さがあります。
彼女が上着のジッパーを下げて見せたのはMDが要らないMP3プレーヤーに違いありません。
そうすることによって、「私のレベルはあなたとは違うのだ」「あなたは私にふさわしくない」と突き放しているのです。
徹信が直美の彼氏の存在を明信に黙っていた理由
徹信と明信は心から信頼し合っています。世界中が敵になっても相手は裏切らないという絶対的な信頼があるのです。
でもそのような間宮兄弟にもお互いに隠していることはあります。
兄弟はそれぞれ部屋の窓のカーテンを少し開けて向かいのビルの女性をチラ見していますが、二人は別々の女性を見ています。
そういう違いはどうでもいいのです。兄弟はお互いに共有できる圧倒的な部分を持っていることをわかっています。
徹信が直美の彼氏の存在を明信に黙っていたことを知った明信はショックを受けます。
徹信は明信の女性対する臆病なキャラクターを知り尽くしていましたので、彼氏の存在を明信に知らせない方がよいと考えたのです。
徹信の明信に対する素直な思いやりだったのでしょう。
いいかえれば、間宮兄弟の関係はその程度の行き違いで何かが変わるようなものではなかったもいえます。
間宮兄弟の生き方
間宮兄弟の二人は一人の男としてみれば決して魅力的ではありません。
女性から見た男の色気にも乏しいといえます。むしろそのオタクっぽさは多くの女性が引いてしまう要因にもなるでしょう。
では実際に間宮兄弟のように生きられるかと問われれば、実はそれほど簡単ではないことに気づくはずです。
簡単なようで難しい間宮兄弟の生き様
大きな野心はないけれど、それなりにやりがいのある仕事を持ち、二人だけのルーティンともいえる楽しみもあり、何よりも誰よりも信頼できる人がいる。
人が生きていく上でこれ以上何が必要なのでしょうか。欲望にはきりがありません。間宮兄弟は足ることを教えてくれます。
人は厄介です。足ることを知ることはそれほど簡単なことではありません。
ほとんどの人は間宮兄弟のようには生きられないのです。でも彼らの生き方に近づくことはできるのではないでしょうか。
あくせくする毎日にいて、何がそこまで自分を駆り立てているのかに思いを致すことも必要かも知れません。
その際間宮兄弟の生き方を思い出してニンマリしてみましょう。
思いやりの形
間宮兄弟たちのお互いに対する思いやりはあまりにもナチュラルです。