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映画『永遠に僕のもの(El Angel)』は2018年公開のルイス・オルテガ監督による伝記犯罪映画です。
製作にはペドロ・アルモドバルも携わり、1971年のアルゼンチン・ブエノスアイレスを舞台に物語が展開されます。
主人公カルリートス役のロレンソ・フェロと不良少年ラモン役のチノ・ダリンの演技力が見所でしょう。
惜しくも第91回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート・受賞は逃しましたが完成度は非常に高いです。
絶世の美しさを持ちながら内面が非常に凶悪な連続殺人犯の半生とはどのようなものだったのか?
本稿では終盤カルリートスが汽車の中で泣いた真意をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、彼がミゲルの顔を焼いた理由とラモンを事故死させた理由も併せて読み解きます。
黒い天使
アルゼンチン史上最凶の犯罪者で有名なカルロス・エディアルド・ロブレド・プッチ。
「黒い天使(EL ANGEL NEGRO)」と呼ばれた彼はとても犯罪者と思えない程の美貌をお持ちです。
ごく普通の家庭で平凡な両親のもと「良い子」として育ちながら非常に冷徹な大悪党でありました。
殺人事件のみならず窃盗・恐喝・性犯罪と世の犯罪行為を涼しい顔してやってのけています。
このような難役を高い演技力とビジュアルで成し遂げたロレンソ・フェロも見事です。
フェロの作り上げたカルリートスは果たしてどのような人物像だったのでしょうか?
あらすじをしっかり整理しながら、本作の魅力を本題に沿って考察していきます。
汽車の中で泣いた真意
本作で1番解釈・考察がわかれるであろうシーンは脱獄した際の汽車での涙です。
これまでどんな罪を犯しても、どんな人の死にも泣かなかった大悪党が泣きました。
果たして何故にカルリートスはここで涙を流したのでしょうか?
少数派の孤独
まずこの涙の大元にある感情は「孤独」だったのではないでしょうか。
少なくともカルリートスは人並みの情緒というものが欠落しています。
相棒だったラモンやミゲルが死んで悲しいなどという感情は一切ありません。
彼の中にあったのはずっと自身の犯罪者としての感性が理解されないことです。
両親をはじめ誰にも理解されない少数派の孤独が彼をして涙を流させたのでしょう。
精神障害者扱い
2つ目にこの涙を流す直前に両親が放った「精神障害」という言葉が決定打となりました。
実の両親からも精神障害者の烙印を押され、腫れ物扱いされてしまったのです。
それに対するカルリートスの次の言葉がとても印象に残ります。
普通の人でも出来ると思う。
引用:永遠に僕のもの/配給会社:ギャガ
彼にとって犯罪行為は息をするに等しい日常だったわけであり、決して非日常ではありません。
誰よりも1番認めて欲しい両親にそれが認められないことが1番悔しく悲しかったのでしょう。
承認欲求
彼の孤独の根底突き詰めていくと承認欲求になるのではないでしょうか。